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――ついにこの時が来てしまった。
いつかはその時が来る、それは分かりきっていた。けれど、どこか夢の中の出来事のようにも思えていた「その時」は、本当にAの元へと訪れてしまったのだ。
スカルの前であの言葉が出されてしまった以上、もう後戻りすることはできない。Aは覚悟を決めて、スカルと向き合う。
「スカルくん。私――言わなきゃいけないことがあるの」
スカルは静かに頷きながら、Aの話を聞いている。
「私がこの大会にスカルを誘ったのは……その、優勝の……ウェディングフォトが、目当てで……」
静かな潮風が、波の音とカモメの鳴き声を運んでくる。スカルの瞳に宿る光が、ほんの少しだけ揺らぐ。
「私……スカルくんのことが、好きなの。本当はずっと、伝えなきゃって思ってた。だけどずっと、言えずにいた。だから、こんな騙すような形で、大会に誘っちゃって……」
Aが全てを言い終わる前に、彼女は突然、ふわりと自分を包み込む温かい感触に気付く。
(スカルくん…………!?)
気付けば、Aはスカルの腕の中に、抱きしめられていた。
「オレは……最初から分かっていた」
「え……?」
柔らかな腕の感触に閉じ込められたまま、Aはスカルを見上げる。
「イカップル杯が開催されることも、優勝賞品の内容も、オレは全部知っていた。その上で、お前からの誘いに乗った。……けれど、伝えたいことを伝える勇気もないままで、賞品は何かと聞いて、お前の真意を引き出せないかと考えていた」
「スカルくん……」
「オレはお前が思うほど、完璧な奴ではない。この想いが恋だと気付いた後も、オレには動き出す勇気なんて無かった。悩んで、迷って、何度も遠回りして――そんな日々の繰り返しだった」
Aに触れるスカルの手が、微かに震えていた。
「だけど、今ならもう、遠回りせず伝えられる。オレは本当は――ずっと、こうしたかった」
Aを抱きしめる腕の力が強くなって、Tシャツ越しに彼の熱と心臓の鼓動が伝わってくる。A自身と同じように早鐘を打つその心音で、ああ、彼も同じ気持ちでいるんだ、とAは気付く。
「A。オレは――お前のことが好きだ。だから……オレをAの恋人にして欲しい」
「スカルくん……私も……スカルくんの恋人になりたい!」
Aはスカルの背に腕を回して、彼を抱きしめ返す。二人の熱が、鼓動が、どちらのものかも分からぬほどに近づき合い、混ざり合っていった。
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ただの紺色(プロフ) - スカル落ちのストーリーはあんまりないので読んでて楽しかったです! (12月24日 2時) (レス) @page23 id: ec9847f949 (このIDを非表示/違反報告)
とある少女 コロイカ 緑チームシリーズ 大好き! - 続き嬉しいです 楽しみにしてます! (2023年4月11日 16時) (レス) @page3 id: 7ed1cae315 (このIDを非表示/違反報告)
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