13 ページ13
***
果てしなく広がる澄んだ青を眺めながら大きく息を吸えば、潮の香りが胸に満ちてゆく。マンタマリア号の停泊する港に設けられた観客席は、前回の決勝戦よりもさらに多くの客が押し寄せていた。
「緊張しているのか」
Aの隣に立つスカルは、普段と変わらぬ、澄ました顔であった。
「うん……だいぶ。スカルくんは、こんな時でも緊張しないの?」
「いや…………している」
意外な返答に、Aは視線を上げる。
「スカルくんでも、緊張することあるんだ」
「何しろ今回は……特別だからな」
「特別……」
その時、スカルが何かに気付いたように、観客席の方へと振り向く。
「む、あいつらは……」
「あっ、もしかして……S4の!?」
スカルの視線のすぐ先には、Aも知っている、S4のアーミー、アロハ、マスクの姿があった。
「遂に決勝戦だな! 優勝したら、ワガハイが祝いのカレーを振る舞おう! Aも遠慮なく食べるが良い!」
「やっぱ悔しいけど、Aちゃんはスカルがお似合いだよね〜。ってことで、特別に見に来ちゃったってカンジ〜」
「こんなリア充だらけの大会……仕方なく来てやったんだからな〜、S4の顔に泥を塗るようなことはするなよ〜」
「……ああ。言われなくとも、オレ達は必ず、勝利を掴みに行く」
スカルはS4の皆に向けて力強く頷き、そして再びAの方へ向き合う。
「この決勝戦は、ステージも、対戦相手も、オレ一人では決して立ち向かえない。それはA一人であっても同じことだ。だが、オレとA、二人で力を合わせれば――不可能を可能にできると、オレは信じている」
潮風が吹き抜けて、彼のスカルマスクを靡かせる。見えそうで見えないその口元に、彼はどんな感情を隠しているのか。今のAには知る術は無い。だけど、きっと今、スカルは笑っている気がする――何故だか、Aにはそう思えた。
「必ず、勝ちに行こう。オレとお前と、二人でしか成しえない勝利を掴むんだ」
「うん!」
『さあ、第6回イカップル杯、いよいよ決勝戦です!』
『アルファチームは、言わずと知れたS4最強の狙撃手、スカル選手と、そんな彼を見事打ち破ったマゼンタチームの新進気鋭のラクト使い、A選手のペア!』
『そしてブラボーチームは、同じくマゼンタチームからやって来た、前回王者のグレープ選手とサニー選手のペアです! これは面白い戦いになりそうだー!』
15人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ただの紺色(プロフ) - スカル落ちのストーリーはあんまりないので読んでて楽しかったです! (12月24日 2時) (レス) @page23 id: ec9847f949 (このIDを非表示/違反報告)
とある少女 コロイカ 緑チームシリーズ 大好き! - 続き嬉しいです 楽しみにしてます! (2023年4月11日 16時) (レス) @page3 id: 7ed1cae315 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ