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結局、Aのチームはスカルのチームから1勝すらも奪い取ることはできなかった。これでは辛いチームに貢献どころか、甘いチームに大量の貢献度を献上する羽目になってしまったに違いない。がっくりと肩を落としながら、Aはナマコフォンを開いて自分の戦績を確認する。両目に飛び込む「昇格戦まであと20pt」の文字。こんな調子では、フェスが明けてから挑む昇格戦もまた惨敗で終わってしまいそうだ。
「少し気分転換でもしたらどうだ」
落ち込むAに、スカルが声をかける。
「少し腹が減った。良ければ今から一緒にカフェに行かないか」
「え、私と……? 私で、いいの?」
「ああ、行くぞ」
ロビーの近くにあるカフェに入り、スカルはイチゴパフェを、Aはアップルパイを注文した。
「そういえば、お前は辛いチームだが、こんな所に誘って良かったのか?」
「むしろ嬉しいよ、甘いものも好きだし、最後までどこに投票するか迷ってたぐらいだから」
そのまま財布を取り出そうとする彼女を制して、オレが誘ったんだから、と彼はAの分まで会計を払ってくれた。
フェスに「甘い」派として参加しているのを知った地点で分かってはいたのだが、彼はその見た目とは裏腹に、意外にも甘党らしい。今日何度か対戦しただけの間柄だが、それでもAは彼の意外な一面を見ては、その度に胸を撃ち抜かれるような感覚に至った。天然で、方向音痴で……そして、つい先程運ばれてきたばかりのパフェを、素顔を見せる間も無く一瞬で平らげてしまう所も。
「あの……スカルくんは、どうして私と再戦しようと思ったの? S+にすらなれなくて、こんなに弱いのに」
無口なスカルは自分からなかなか話題を振らないので、思い切ってそう尋ねてみた。
「最初に言っただろう。“面白い”からだ」
「面白い……?」
「ああ」
そう言うと彼は、以前ハイカラシティにいた頃の出来事を話してくれた。
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