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「あーあ、やっぱり負けかー」
「あのラクトもキルレ悪かったし、たぶんマルミサマンか稼ぎ目的でしょ。帰ろ帰ろ」
試合を終えた味方の野良イカたちの声に聞こえないふりをしながら、ロビーの出口へと向かう。マナーを守らない一部の者たちのせいで、ラクトに良い印象を持たない者がいることもAは分かりきっていたし、野良試合で「自陣塗りしか能がない」「どうせマルミサマン」「どうせ金稼ぎ目的」などと言う声を耳にすることもこれまでに何度かあった。それでもウデマエS+0にすらなれない自分が、あのスカルと相打ちに持っていけただけでも凄いことではないのか。もう少し褒めてくれたっていいのに、とAは不貞腐れていた。
「あいつらの言う事など、気にするな。お前はよくやったではないか」
突如として、声がする。驚き振り返ると、そこにいたのはイカスカルマスクを着けたボーイの姿――あのスカル本
「ただオレの射程から逃げるだけでは無い。マルチミサイル、カーリングボム、メインの射撃。全てを使いこなして打開のきっかけを作り、そして射程を恐れずオレに挑んできた」
低く、落ち着いた声だった。真摯な瞳で、彼はAに告げた。
「――お前との戦い、面白かったぞ。良ければまた、対戦しないか」
マスクの下の表情は、見ることができなかった。けれどAには、マスクの下で彼が笑っていたように感じられた。途端に、彼女の胸は熱く高鳴り始めた。
恋に落ちる、とはまさしくこの感覚のことを指すのだろうと、Aはそのとき悟ったのだった。
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