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……残り1分。だがAは諦めていなかった。敵の追撃を振り払い、障害物に隠れながらひたすらに右のルートを塗ってゆく。そして敵の4人を捉えてマルチミサイルを放つ。スカルが高台から降り、前線が崩れ始めた。その好機を見逃さなかったのか、味方たちは一気に反撃を始める。だが敵も強い。降り注ぐマルチミサイルの雨と互いのインクが交錯する激しい戦いの末、イカランプには六つのバツが付いた。
『残るは辛いチームのA選手と……』
『甘いチームのスカル選手!』
『エイ……ッ!(両チーム残り一名、ここからどう出る!?)』
(私とスカルの、一騎打ち――ここでキルを取れれば、逆転のチャンスがある。だから、やるしかない!)
マルチミサイルが捉えていたスカルの姿を追って、Aはステージの中央へと飛び込んだ。右からカーリングボムを投げ、左からメインの塗りで袋小路へと追い込んでゆく。だが、あと一歩でこちらの射程内、という所で突如、地面がインクの爆発を起こす。
『おっとこれは……トラップやで!』
『トラップを踏んだ相手は、半チャージでも仕留められるんじゃ! タダでやられる訳にはいかない、スカル選手の意地を感じるの!』
『それでもA選手、距離を詰めていく! 諦めの色は、まだ見えてへんで!』
トラップによるダメージとマーキング。それを喰らってもらなお、Aの瞳には燃えるような闘志が宿っていた。
(絶対に、絶対に、諦めない)
スカルがリッターを構え、チャージを始める。そしてAもまた、弓を引き絞る。三本の矢を全て命中させれば、こちらの勝ちだ。
(私……勝ちたい!!)
チャージキープでインクに潜り、射線をかわすように動きながら近付き、そしてインクから飛び出して、Aはスカル目がけてインクの矢を放った。
――バシュン!
二つの射撃音が重なり、Aの身体を紫色のインクが貫く感覚が突き刺さる。
『エ、エイ……!(こ、これは……両チーム、ワイプアウト!)』
『ということは……』
『スカル選手とA選手、なんと相打ちじゃー!!』
弾け飛ぶ身体から手放したラクトが落ちていく。その先には、互いのインク跡がくっきりと残されていたのだった。
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