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「結果は……?」
その場にいる誰もが固唾を呑んで、モニターを見守る。映し出された上空からの映像は、ステージの中央で互いの塗りが拮抗しており、どちらの勝ちなのかは分からない。
「…………」
『さあ、ジャッジくん、判定なのじゃー!』
静まり返った会場にスピーカー越しの実況の声だけが反響して、緊張感が高まる。
「…………に゛っ!(ホワイト陣営、0.3%差で勝利!)」
「わあぁーーっ!!!!」
360度、見渡す限りのあちらこちらから歓声が沸き起こる。
『な、なんやてーー!?』
『エイ!(ホワイト陣営のみんな、本当におめでとう! 手に汗握る、熱い戦いだったよ!)』
鳴り止まない拍手と歓声の中、Aはスカルの元へと駆けつける。
「スカルくーーん! やったよ、私たち、333倍マッチ、勝てたんだよ!」
気付けば野良の味方たちも、そこに集まって来ていた。彼らとハイタッチを交わして、互いに勝利を称え合う。Aがスカルともハイタッチをしようと手を伸ばせば、彼は「フッ」と静かに声を零して、ハイタッチに応じた。
「スカル。……更に強くなったんだな、お前は」
背後から誰かの声と靴音が近付いてくる。振り向けば、そこにはヴィンテージが歩み寄って来ていた。
「それに、そこのラクトもだ」
「えっ、私?」
「ああ。Sとは思えない勇敢さと、スカルとの見事な連携。……実に面白い試合だった」
「そ、そんな……」
Aが照れていると、スカルはムッとして言い返す。
「そんな事はもう知っている。オレが彼女の強みを見出したから、今こうして共に参加しているのだ」
途端、ヴィンテージは少し呆れたようにため息をつく。
「何だスカル、何故そんな所で張り合う? お前はもしかして……いや、今はそんな事はどうでもいい」
ひとつ咳払いをして、再び腕を組んで堂々と立ちはだかったヴィンテージが告げる。
「次にまたお前たちと戦うことがあれば、その時こそ、オレが勝利を手にしてみせよう」
「ああ。オレも勝ちを譲る気などない。……楽しみにしているぞ」
力強く、信念のこもった言葉を互いに交わして、ヴィンテージはスカルの元を去っていった。その背中と、白に染まった床に立つAたちに降り注ぐ歓声は、未だ止む気配を見せることはなかった。
「……Aは、着実に強くなりつつある。そろそろ、『頃合い』なのかもしれないな」
マスクの下で、誰にも聞こえることのない声で、スカルは静かにそう呟いた。
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