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そろそろ前線がぶつかり合うタイミングだろうか、という所で1回マルチミサイルを撃ち、塗りを広げながら徐々に前へと向かっていく。2回目のマルチミサイルを撃ち、手前にいた敵を袋小路へ追い詰めてそのままインクの矢を浴びせ、リスポーンへと送ってから、Aはようやく前線での戦いに参加し始める。
「お待たせ、スカルくん!」
「自陣塗りが終わったか。敵は俺が撃ち抜く。お前は人数状況を見ながら塗りを広げていけ」
「分かった!」
返事をすると共に、Aはカーリングボムを投げて敵陣方面へと進出していく。背後でリッターの射撃音が響くと同時に、一つ、また一つとモニター上の敵のイカランプにバツがついていく。
『エイ!(スカル選手、橋の上から二人連続で仕留めたー!)』
『これがスカルエリア!恐ろしい命中率じゃの!』
『ビター陣営、どうにかして突破の糸口を見つけるんや!』
(よし、スカルくんのおかげで人数有利になったし、敵陣を荒らすチャンスだ!)
カーリングボムの跡を辿って敵陣に足を踏み入れたAは、そのまま四方八方へとインクを撒き散らし、青紫のインクに染まった地面を眩しい白色へと上書きしていく。
(このまま、荒らしまくってやる……!)
Aが夢中で塗りたくっていた、その通りだった。
「退け、A!」
「えっ……!?」
遠くから聞こえるスカルの声に反応して、咄嗟に腕を止め、インクに潜る。――だが遅かった。Aの目の前には、クーゲルシュライバーを手にした影が――ヴィンテージが、立ちはだかっていた。
「そこまでだ」
(…………っ!)
Aは咄嗟に後方へと退く。だが逃げようとする先には既に、足元を奪おうとするように敵が待ち構えていた。
(しまった、囲まれて……!)
「――散れ」
青紫色のインクの弾幕が、Aを直撃する。
『エイーッ!(ああっと、ここでA選手、ヴィンテージ選手にやられてしまった!)』
「A!」
スカルの叫び声が遠ざかっていくその間にも、地面は少しずつ青紫色のインクで塗り返されてゆく。Aのデスを起点としてか、攻勢に転じたビター陣営は勢い止まらず、一人また一人とこちらの味方を追い詰め、ヴィンテージの射撃で仕留めてゆく。
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