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両陣営の参加者が、観客が、一気にどよめきに包まれる。
『これは絶対に負けられない戦いや! ビター陣営の皆、きばっておくれやす!』
『エイ!(ホワイト陣営も、負ける訳にはいかないね!)』
ざわめきは収まらないまま、両陣営の顔合わせとなる。スポナーから姿を出し、それぞれの編成を確認する――その瞬間、会場のざわめきは、さらに大きな歓声と化した。
『な、なんとこれは!』
『ビター陣営には、あのXブラッドのヴィンテージ選手が参加しとるで!!』
(嘘、Xブラッドって……ウデマエXが廃止された今も、S+50の強豪として知られている……!)
Aの顔からはビター陣営のインクの色にでも染まろうかという程に血の気が引いていき、ブキを握る手は震え始める。
(よりによって、333倍マッチなのに、こんなの勝てる訳ない……!)
目の前の現実から目を背けるように、ぎゅっと目をつぶって、下を向く。
「――恐れるな、A」
隣からスカルの声がして、Aははっと顔を上げる。
「良い連携だったと、言ったのはお前だろう。戦うのはお前だけではない。オレと仲間でいることを忘れるな」
「…………!」
見上げるAの瞳に、希望の光が宿り始める。
『エイ!(ホワイト陣営には、S4最強のリッター使い、スカル選手も来ているよ!)』
実況の声を聞きながら、Aは胸を押さえ、深呼吸する。
『ヴィンテージ選手とスカル選手の因縁の対決、勝つのは一体どっちなのじゃー!?』
(そうだ、私には味方がいる、スカルくんがいる。これまで通り、力を合わせれば……!)
雨雲が晴れ、光が射し込むように、Aの不安は解け、その胸には決意の火が灯る。
(必ず……勝ってみせる!)
『レディー……ゴー!!』
スポナーから飛び出して、まずAがするのはやはり自陣塗りだ。スカルは作戦通り、野良の味方もAが自陣塗りをしたいタイプのラクトであることを察してか、一直線に前線へと進出していく。
『ビター陣営、塗りを広げつつ徐々に進出しとるようやな』
『エイ!(ホワイト陣営は早くも中央の橋を陣取ったようだね!)』
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