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『……に゛っ!(ホワイト陣営の勝利!)』
ジャッジくんがそう告げると同時に、周囲から歓声が湧き上がる。
「やったね、スカルくん! 私たち、良い連携だったんじゃない!?」
ステージ中央を越えて前線を押し上げていたAは、満面の笑みで飛び跳ねながら、スカルが陣取っていた高台の方へと戻ってくる。
「ああ、そうだな」
相変わらず最低限の言葉だけの反応だ。もう少し褒めてくれたら、もっと嬉しかったのに、などとAは考えてしまう。恋する乙女というものは欲張りだ。ほんの少しの言動にも胸をときめかせ、でもそれでも足りないと、まだまだ近づきたいと、果てない想いの底へと手を伸ばしながら溺れてゆく。
(私は、もっとスカルくんに近付きたいんだ。もっと心を通わせたいんだ。もっと、もっと……)
隣に立って見上げた白インクのスカルは、Aと同じ色でありながら、何物にも染まっていないかのようにも見えた。
――いつか、心まで彼と同じ色に染まれたら、どれほど嬉しいだろうか。そう考えながら、Aは白く染まった床の上を歩き帰っていった。
***
『さあさあお立ち会い! お次はホワイト陣営対ビター陣営、ステージはゴンズイ地区やで!』
フェスもいよいよ最終盤に差し掛かろうかという頃、これで最後の試合にしようと、Aとスカルはオープンのフェスマッチに参加していた。
『今回はどちらが……おおっと、これは何じゃ!?』
スポナーから両陣営が姿を表す直前、モニターの映像に稲妻が走る。10倍マッチか、とAは気が付いて、スポナーに身を潜めたまま、負けられないな、と意気込む。だが程なくして、10倍マッチとは様子が異なることに気付く。
『エイ……(も、もしやこれは……)』
次の瞬間、派手な効果音と共に、モニターに「333倍マッチ」の文字が現れる。
『な、なんと! 333倍マッチじゃー!!』
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