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バトルに誘うのは、最初はいつもAからだった。だが、ここ最近は、スカルからも誘いが来るようになっていた。もしかしたら、スカルが自分のことを考えてくれていることが増えているのかもしれない。そう考えるだけで、胸の内に淡い熱が灯る。
(スカルくんは、いつも何を考えているのか分からない。だから、もっと知りたい。どんなことを思っているのか。私のことを、どう思っているのか)
自分から誘わなければ、スカルはどの陣営を選ぶのか。それが、「Aのことをどう思っているのか」に対する答えに繋がるほんの僅かな手がかり、パズルの1ピースになる、とAは考えていた。
結局、ホワイト陣営に入れたいと思っている、という内容だけ送信して、ナマコフォンを閉じると、そのまま胸の前で握りしめながら返信を待っていた。
それはほんの一、二分の間にも、とてつもなく長い時間のようにも思えた。やがて通知音が鳴った時、Aは思わずその場で飛び上がってしまったために、周囲の通行人から怪訝そうな視線を一身に浴びてしまった。
心拍数が上がり始めていた。どのような返信が来ているのだろうか。見るのは怖いような気がして、でも早く確認してしまいたくもあった。もう何が起こってもいい覚悟を決めて、Aはナマコフォンを開いた。
『なら、オレもホワイト陣営に入れることにする。昇格戦に向けた特訓も兼ねて、一緒にフェスマッチに参加するのはどうだろう』
(――――!!)
湧き上がる嬉しさが、体温を上げていくのを感じた。同じ陣営。一緒に参加。思わずにやけて口角が上がってしまう。周囲の通行人たちからまたしても怪訝そうな視線を浴びることになってしまったが、そんなことなどAにとってはもはやどうでも良い事だった。Aの胸の内は、はち切れそうなほどにスカルのことで一杯になっていた。
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