Chapter1 Fall in Sweet Love - 1 ページ3
野良のバトルは、スポナーから姿を出すまで敵も味方も誰が来るのか全く分からない。
『さあさあお立ち会い!お次のバトルは「辛い」チーム対「甘い」チームやで!』
『エイ!(ステージはチョウザメ造船だよ!)エイエイッ!(中央の二つの高台を抑えるのがこのステージの鍵だね!)』
『優勝目指して、ファイトじゃー!』
フェスを盛り上げるすりみ連合の実況の声がスピーカーから響く中、LACT-450を手にしたAは、「辛い」チームの赤いインクを纏い、チョウザメ造船の上空のスポナーから身体を出した。
彼女はバンカラ地方にバトルステージが設置され始めた頃からバトルを始めた者であり、イカタコ達の中では比較的新参に当たる部類だ。それでも僅か数ヶ月でウデマエSにまで到達することができるほどには成長していたし、スポナーから出れば真っ先に、敵味方のブキ編成を確認するのはもはや当たり前の習慣となっていた。
(味方は……黒ザップ、ボールド、スプロラか。短射程ばかりなのが少々不安だけど……)
味方の編成を把握したAは、次に敵の編成に目を向ける。
(うわ、リッターがいる……って、ちょっと待って。あれって……)
敵も、味方も、観客席も、全てがざわめきに包まれる。瞬きをして、敵のスポナーと、モニターに掲げられたネームプレートを二度見、いや、三度見する。
間違いない。彼はS4の――スカル。
ハイカラシティ、ハイカラスクエアに続き、バンカラ街でもS+上位帯の熟練者としてその名を知られるS4。Aも、その名前だけは何度も耳にしたことがあった。しかし、まさか自分がその内の一人、しかも最強格と言われている者とマッチングするとは、夢にも思っていなかったのだ。
しかも敵の残り3人の編成は、シャープマーカー、ラピッドブラスター、ジムワイパー。射程有利が一人しかいない。編成事故もいいところだ。
手が、膝が、震えている。S+昇格戦で既に3連敗を味わっている自分に、こんなの勝てるはずがない。――いや、そう思うのはまだ早い。敵の編成はこちらに比べて塗りの弱いブキばかりだ。勝ち目は十分にあるだろう。そう自分に言い聞かせ、Aはスポナーに潜る。
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