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休憩ついでに新しいギアでも見て行こうかと、ロビーから外に出たAは、すぐ横のラジオブースの前が何やら騒がしいのに気付いた。人だかりに混ざって、遠くのガラス越しにすりみ連合の姿を確認する。どうやら、次のフェスのお題が発表されるらしい。
何が来るのかという緊張感の中、モニターに映し出されたのは、「ビター」「ミルク」「ホワイト」の文字。どうやらバレンタインにちなんだお題のようであった。ブースの前に密集していたイカタコ達がざわめき始める。ビター派、ミルク派、ホワイト派、あちらこちらでそれぞれの陣営の主張の声が入り乱れていた。
お決まりの「ほな、カイサン!」の掛け声と共にラジオが終わると、集まっていた者たちはそれぞれ思い思いの場所へと散ってゆく。だがAはその場に立ち止まったまま、長い間、唸るように考えていた。
(ビターのほろ苦さも癖になるけど、王道のミルクも捨て難い。でもやっぱり、見た目と味で色んな楽しみ方ができるホワイトが一番気になる……)
ぐるぐると巡り巡る三つ巴の思考にどうにか決着をつけようと、目を閉じたまま考えていたAだったが、やがてふと思い立ったように顔を上げると、ナマコフォンを取り出して、スカルにメッセージを送る。
『次のフェスのお題、もう見た? スカルくんはどれにしたい?』
程なくして返信が来る。
『オレはどれも好きだから、まだ決めかねている。Aはもう決めたのか?』
前半は、やはり甘党のスカルらしい、予想通りの内容だった。だが、こちらの投票先まで聞いてくるのは少し意外だった。もしかして私と同じ陣営に入れようとしているのだろうか、なんて淡い期待を抱きながら、返信の文を打つ。
『そうだなぁ、私は今のところホワイトが一番気になってるかな』
そこまで打ってから、送信ボタンに指を伸ばそうとして、画面に触れる直前にふと指を止める。
『もし良かったら、一緒にホワイト派に入れない?』
先程の文にそう付け足して、ほんの少しの間、送信前の文と睨めっこして、結局、全ての文字を消してしまった。
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