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そもそも、彼がこういった敵意を向けられるきっかけになったのは、わたしが彼に差し伸べられた手を取ってしまったからだ。
あわよくば、隣を歩くことを許されたと錯覚してしまった。
唯の小娘が、彼の隣に並んで良いはずが無かった。
それにもっと早く気づくべきだったのに。
わたしが彼の元を離れて、レオナさまが政治に口出しすることを止めれば、それだけで彼に向けられる殺意や敵意は矛先を収めるだろう。
煩い仔猫が消え、彼がひとりになれば、もう誰からも狙われることはない。
それだけの、シンプルで誰も傷つかない、無難な結末。
わたしの気持ちとか、思いなんて、取るに足らないほどに些末なこと。
一匹の仔猫が、獅子に焦がれた＿＿ただそれだけの夢物語で終われば、それで良い。
レオナさまが、なんとも形容しがたい複雑な表情を見せて、腰掛けていた椅子から立ち上がった。
「A、」
「何も言わないで！」
低く、耳に心地よく響く彼の声が、わたしの名前を紡ぐ。
それでも、今は何も言わないで欲しかった。いま、何か言われたら決意が鈍ってしまう。
「もう、大切な人を失いたくないの…」
母さんが流行り病で死んだとき、本当に本当に苦しかった。忙しさの中にその悲しみを埋めて、自分の気持ちを誤魔化していたけれど、本当は毎日泣きたいくらいだった。
いま、わたしの目の前にいる彼は何者にも代え難い大切な人になっている。
わたしがこの部屋を出て、3日後に彼がカレッジに戻れば、わたしがレオナさまの侍女になる前の生活が戻ってくるだけだ。
もう、彼と一緒に議論をすることも、彼に手紙を書くこともない。
「今まで、ありがとうございました」
色々と引きずっている気持ちを無視して、部屋を出ようとしたとき、再びレオナさまがわたしの名を呼ぶ。
「A」
どんな感情がこもっているのか、一切読めない声。
わたしの名前を呼ぶ。それだけで、この人はわたしの足を動けなくしてしまうんだから、どんな魔法だろう。
「…はい」
わたしが返事をして振り向けば、彼は存外穏やかな顔をしていた。
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麗奈 - とても読んでいて、キュンキュンしました。レオナさんの優しさや独占欲嫉妬心、なにより溢れんばかりの愛情。これがとても伝わってきて、読み終わったとき、どうかこの二人が幸せになりますようにと、心から思わせてくれるような作品でした。 (2023年4月1日 19時) (
レス) @page34 id: 1d0df350f7 (このIDを非表示/違反報告)
candy - コメント失礼致します。ご作品拝見させていただきました！夢主とレオナの関係性を含んだ上でもどかしさだったり切なさだったり、でも甘かったりとても見ていて面白いなぁと思いました！それに何よりるり様の描く描写や世界観があまりに素敵で見入ってしまいました！ (2023年1月2日 2時) (レス) @page34 id: 3ec148aec7 (このIDを非表示/違反報告)
津城瑠生(プロフ) - コメント失礼します。文章の書き方が想像しやすくてすんなりと物語の世界に入っていきました。レオナさんの悲願と言ったらいいんでしょうか…、それが叶っていく過程がとても好きです。素敵なお話をありがとうございました。 (2022年11月21日 8時) (レス) id: 90b7e5739a (このIDを非表示/違反報告)
明理(プロフ) - 面白くてつい一気読みしてしまいました…！何度「ん"ｯ」ってなったことか…！！！久しぶりに満足できる甘々小説を読めました！ありがとうございました！！ (2022年5月31日 21時) (レス) @page34 id: 0be17a4bd3 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - もさん» もさんありがとうございます！こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2022年1月22日 19時) (レス) id: 8e93effa05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るり | 作成日時：2020年8月2日 17時
