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単体で存在する塩素、黄リンや、生物毒の代表であるヘビ毒から始まり、人工的に作られる魔法薬まで。
『魔法』という手段を使って世界を広げたわたし達は、人を治し、癒すことと同時に、人を傷つけ、苦しめることも容易く可能になった。
わたしの主人であるレオナさまは、わたしの身を案じてくださるけれども、言わずもがな彼の立場の方が、ずっと危ういものだ。
わたしたちが議会に様々な政策や審議を申し上げている…それらの行いから、レオナさまを王に、という声が一部で上がり始めていた。
彼には、隠すことの出来ないカリスマ性、大衆を導く力が備わっている。
それはおそらく、現王のファレナさまに匹敵するほどのものだ。
確かに、彼は『王になりたい』という野望を抱いているし、わたしも彼のその望みを叶えるための手助けをしていることは事実だ。
それでも、彼やわたしが言う『王』というものは、この国をより良く導くためのもの。
ファレナさまの就いていらっしゃる、玉座に座る『王』とは似て非なるものであって、決してそれ自体を望んでいるわけではない。
でも、燻り始めた火は、誰かが消すまで消えることは無い。
一部で『第二王子を王に』という声が挙がれば、それに賛同するもの、逆らう者だって出てくる。
そうなって、それらの火種が激化したら?
不穏因子は消しておくのが得策と、レオナさまは最悪、王族の権利を剥奪されることだってあり得る。
この前送られてきた毒本だって、おそらくそれらの一部。
そう考えてしまうと、レオナさまとの『議論』の時間にも少しずつ不安がまとわりついてくる。
神経質になりすぎと言われてしまえばそれまでだけど、気にしすぎて悪いことは無いと思う。
わたしだって、想い人が傷つけられそうになって平気で居られるほど大人じゃ無いのだ。
レオナさまがカレッジにお戻りになるまで、あと3日。
それまでに何も起こらないと良いのだけれど、そうもいかないだろう。
昨日、レオナさまと一緒に議会へ書類を提出して、議員の前で意見交換をし合った際、中々好感触だった。
もしかしたら、近々わたしたちの教育政策が実行に移るかもしれない。
それそのものはとても嬉しいことだけれど、それが気に入らない貴族や重臣は、どんな行動を取るかわかったものじゃ無い。
もしかしたら、また…と考えたところで、その考えを振り払った。
でもどうやら、『起こって欲しくない』と思ったことほど、人生では起こるものらしい。
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麗奈 - とても読んでいて、キュンキュンしました。レオナさんの優しさや独占欲嫉妬心、なにより溢れんばかりの愛情。これがとても伝わってきて、読み終わったとき、どうかこの二人が幸せになりますようにと、心から思わせてくれるような作品でした。 (2023年4月1日 19時) (レス) @page34 id: 1d0df350f7 (このIDを非表示/違反報告)
candy - コメント失礼致します。ご作品拝見させていただきました!夢主とレオナの関係性を含んだ上でもどかしさだったり切なさだったり、でも甘かったりとても見ていて面白いなぁと思いました!それに何よりるり様の描く描写や世界観があまりに素敵で見入ってしまいました! (2023年1月2日 2時) (レス) @page34 id: 3ec148aec7 (このIDを非表示/違反報告)
津城瑠生(プロフ) - コメント失礼します。文章の書き方が想像しやすくてすんなりと物語の世界に入っていきました。レオナさんの悲願と言ったらいいんでしょうか…、それが叶っていく過程がとても好きです。素敵なお話をありがとうございました。 (2022年11月21日 8時) (レス) id: 90b7e5739a (このIDを非表示/違反報告)
明理(プロフ) - 面白くてつい一気読みしてしまいました…!何度「ん"ッ」ってなったことか…!!!久しぶりに満足できる甘々小説を読めました!ありがとうございました!! (2022年5月31日 21時) (レス) @page34 id: 0be17a4bd3 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - もさん» もさんありがとうございます!こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました! (2022年1月22日 19時) (レス) id: 8e93effa05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るり | 作成日時:2020年8月2日 17時