子供は海へ舟は水ーその26 ページ20
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取り敢えず二人が潜ってから、三十秒数えてみた。
が、一向に上がってくる気配はない。
それからもう三十秒数えてみた。
……が。
「ねぇぜんぜん上がってこないんだけど……!!!!」
三十秒たす三十秒って一分?
果たして人間は一分も水の中で息をせずにいられるのだろうか。
俺は20秒ちょっとぐらいしか無理だ。
さすがにそろそろ助けを…とあたりを見回したその時。
「ぷはっ!!!」
「っうわ!?!?」
ざばっと大きな音を立てて甲斐さんが水面から顔を出した。
「ただいま!!!!」
「びびびびっくりした…おかえりなさい…」
ばくばくと音を立てる心臓を落ち着かせながら甲斐さんに返事する。
…その髪型は濡れても健在なんだ、と思ったり思わなかったり。
そんな俺にお構い無しに、甲斐さんが嬉しそうなと含み笑いをしながら握った拳をこちらに突き出したので、首を傾げる。
「手ー出して!」
「…?」
「はい!」
「っわぁ…!」
差し出した手のひらにばらばらと落とされたのは、色とりどりの貝殻。
真夏の太陽の日差しを浴びて輝くそれは、手の中で様々な光を放っていて、その眩しさに俺は目を細めた。
「どうよ?」
自慢げな甲斐さんの顔。
俺も負けじとにっと笑ってみせる。
「すっごい綺麗です!」
きらきら光るそれに目を奪われていると、
「っぷは、」
「わ!?あ、平古場さんおかえりなさい!」
「ん。」
海から顔を出した平古場さんが濡れた髪を振りほどくようにふるふると頭を振った。
いつも好き勝手にふわふわと踊っている髪が、濡れて張り付いているのがなんだか雰囲気が違ってレアだ、なんて思っていると、平古場さんが俺の手の中をのぞき込んだ。
「ふっふーん。これはわんの勝ちさー。」
「平古場さんも何か見つけたんですか?」
「おーA。見てみろ」
得意げな平古場さんが俺の手の中にそっと置いたのは。
「!!!カニだ!」
「あい!?」
「な?すげーだろ」
ちっちゃくてかわいいカニだった。
俺の手の中でうずくまっていたその子は、手のひらに置かれて慌てたように足をバタバタさせる。
やがて、俺の好奇の目線から逃れるように貝殻を掻き分けて影に潜んでしまった。
貝殻とカニ。
手のひらの発見をじっと見つめて考える。
「海って、いいですね!」
心の底からそう告げると、二人は嬉しそうに頷いてくれた。
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木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» コメントありがとうございます!本当に合宿編は終盤です…最後まで楽しんで貰えたらなによりです! (2019年1月17日 22時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - ルドルフ可愛い...合宿が終わるの寂しいですね。更新頑張って下さい! (2019年1月12日 1時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» 久々の更新にも関わらず、コメントありがとうございます…!長い間ご迷惑をお掛けしましたが、今日から少しずつ更新できればと思います…! (2019年1月7日 23時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - 久しぶりの更新!いつも更新楽しみにしています!これからも頑張って下さい! (2019年1月7日 19時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - キャラメルさん» お返事が遅れてしまいすみません!コメントありがとうございます!そう言っていただけると書きがいがあります…!これからもよろしくお願いします! (2018年10月8日 17時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木こりのコロポ | 作成日時:2018年6月11日 21時