子供は海へ舟は水ーその21 ページ15
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六角の皆と別れて、熱い砂浜を歩く。
足を取られるその熱にも、だんだんと慣れてきた、と言うよりは楽しくなってきてしまう。
(…楽しかったなぁ)
砂山を作った余韻が冷めないままににやにやと辺りを見回すと、ある物に目が泊まって俺の顔から笑顔が消えて、ぽかんと口を開けてしまった。
設置されていたパラソルの影で、体育座りで縮こまっている二人組。
「……甲斐さん?平古場さん?」
思わず名前を呼ぶと、ぶすっとむくれた表情の二人がこちらを向いて、口々にA、と俺の名前を呼んだ。
健康的な褐色の肌がこの砂浜で日陰に狭くしまわれているのはとっても不釣り合いだ。
沖縄に住んでいるのだから海が好きなのだろうと言う偏見は間違いだったかな、と思いつつ、開けられた二人の間にお礼を言いながら座る。
「どうしたんですか?海、嫌いなんですか?」
「海は好き!!」
俺の問いかけに犬耳のような髪をふわりとさせて元気よく答えた甲斐さん。
よかった、いつもの甲斐さんだ。
ですよね、と甲斐さんに相槌を打っていると反対から肩にふさふさの何かがあたり、それが平古場さんの髪だと気づく。
「でも、」
「でも?」
「…うちなーの海の方が綺麗やし」
俺の肩に体重を預けながら棘ついた口調でそう言った平古場さんに、んなぁ〜と甲斐さんが同意の声を上げて、俺はなるほどと理解した。
海が好きすぎる故の、うちなーファーストか。
「つまり、沖縄の海の方が綺麗だからこんなのでは満足できない…と。」
「…ん」
ぶすっとしたまま頷いた平古場さんに苦笑いを返す。
うちなーに対する愛が重いです、平古場さん。
とは言いつつこの二人と一緒に影で座り込んでれば楽しく海に入らずに過ごせるのでは?
そんな考えが浮かんで、肩に当たっている平古場さんのふわふわの髪をもさもさといじってみる。
「俺もここに座っていようかな…」
「なーなー、Aは海行かんど?」
「あ、俺はいいんです」
「あい?」
はは、と軽く笑った俺になんで?と首をかしげる甲斐さん。
うーん、言ってもいいのかな。
俺はもごりながらあの…と切り出す。
「俺、海が苦手っていうが……怖くて物心ついてから海に入った記憶がないんです。」
そう言った時の俺は、「友達に泳げないことをカミングアウトした」程度の恥ずかしさを覚えただけだった。
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木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» コメントありがとうございます!本当に合宿編は終盤です…最後まで楽しんで貰えたらなによりです! (2019年1月17日 22時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - ルドルフ可愛い...合宿が終わるの寂しいですね。更新頑張って下さい! (2019年1月12日 1時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» 久々の更新にも関わらず、コメントありがとうございます…!長い間ご迷惑をお掛けしましたが、今日から少しずつ更新できればと思います…! (2019年1月7日 23時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - 久しぶりの更新!いつも更新楽しみにしています!これからも頑張って下さい! (2019年1月7日 19時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - キャラメルさん» お返事が遅れてしまいすみません!コメントありがとうございます!そう言っていただけると書きがいがあります…!これからもよろしくお願いします! (2018年10月8日 17時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木こりのコロポ | 作成日時:2018年6月11日 21時