・ ページ9
.
「三人で暮らし始めてもうすぐ二年くらい経つんだなぁ」
ケーキを切り分けて食べていると窓の外に雪が降っているのが見えて、うっすら地面が白くなっている。
時間というのは早いもので、二人とも初めて会った時より大きくなっていた。
特にヘジンはもう高校卒業を控えている。
大学には行かず今と変わらず僕とハンター業をしながら働くと言われている。
何度も確認したが意思は固かった。
「そんなこと言ってたらホソクもすぐ中学生になっちゃいますよ」
「ヒョンの言う通りですよ！僕あっという間に大きくなってAさんを守るから！」
口元と鼻先に生クリームをつけたホソクが鼻息を荒くして言った。
それをヘジンが近くにあったティッシュで拭う。
ホソクは僕達のようにハンターになると決意したようで、色んな伝記を読んだ上でいつかは出会えるだろう心優しい吸血鬼と人間の共存できる世界を目指したいと僕達に語ってくれた。
ヘジンは家族のことがあるからホソクの夢にはあまり肯定的ではないはずだがそれでも否定せずに頭を撫でていた。
ホソクもまた、言っても聞かなかった。
危ない世界でも自分も罪のない人を守りたいと。
二人と一緒にいるとたまに軽率にこの世界に引きずり込んでしまった僕が悪者なのではないかと思えてくる。
それを話すと決まって二人は口を揃えて「Aさんについて行くと決めたのは自分だ」と僕を叱り付けた。
「頼もしいね」
「ホソクはAさんのこと大好きだからな」
「やっ…やめてよヒョン！」
ヘジンがホソクをからかって真っ赤にして怒らせている。
こうやってからかい合うようになるのもあの日の夜からだ。
僕にとってもこの子達にとっても一歩前に進むための大切なきっかけだったんだ。
こうしていると母親と一緒にささやかな誕生日会をしていたのを思い出す。
今度は苺の取り合いを始めた二人を宥めてまだ残っていたケーキの苺を全部取り外し二人に平等に分けた。
「えっAさんのは？」
「ヒョンが欲張るから！」
「ホソクだって欲しがってただろ〜」
「僕はAさんにあげるために欲しかったんです」
「二人が食べていいんだよ」
頬を膨らませてホソクは僕のお皿に苺を乗せる。
ヘジンも同じようにしたから結局僕が一番多くなってしまった。
「やっぱ好きなんだ」
「ちっちが…！」
振り出しに戻る二人に僕は頭を抱えながら笑ってしまった。
言い合いながらケーキを頬張る二人を僕は微笑ましく見守った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年10月29日 23時
