Happiness ページ8
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あれから、僕はまた一人で吸血鬼を追うことが多くなった。
しかし、孤独ではない。
ホソクは僕を心配し、着いてこようとしたが説得して家に居てもらっている。
ヘジンは一所懸命に働いて稼ぎを得て、僕も依頼料を少し増やして貯蓄に回した。
段々とホソクも料理ができるようになり帰りの遅い僕達のために夕食を代わりに作ってくれるようになっていた。
「寂しくないかい?中々一緒にいてあげられなくてごめんよ」
「寂しくない、と言えば嘘になりますけど…Aさんもヒョンも頑張ってるの知ってますから。大丈夫です!」
「ホソク、お前本当に…良い子だな!」
「うわっヒョンやめてよ〜!」
「ははっ二人とも仲良しだなぁ」
夕食を囲んだ後、机に宿題を広げて鉛筆を握るホソクをヘジンが頭を撫で掻き回した。
本当の兄弟のようで僕は笑いながら久々の三人の休日、こっそり日々の節約したお金を貯めて買った大きなホールケーキをテーブルに乗せた。
二人共目を点にしてそのケーキを見ている。
「二人とも、誕生日が同じ月だったから真ん中を取ってこの日に買ったんだ」
真ん中の大きいチョコのプレートには“ハッピーバースデー”の文字。
これは僕が書きたかったからケーキ屋でチョコペンを貰った。
随分と歪んだ字になってしまったが喜んでくれるだろうか、と二人を恐る恐る見ても二人は何の反応も示さない。
失敗してしまった、と目を伏せると急にドタバタと走り出して僕に飛びついてくるものだから支えきれずに後ろへ三人でひっくり返った。
「Aさん、ありがとう!」
「すっごく嬉しいです!僕あんなに大きなケーキ初めて食べます!」
ぎゅうぎゅうと僕に抱きついてそう言って笑う二人に僕はほっと胸をなでおろした。
人生でこんなサプライズをするのも初めてだったから上手くいくか心配だった。
想像以上に喜んでくれる二人を僕も抱きしめた。
「良かった、喜んでくれるか不安だったんだ」
「びっくりしすぎて何にも反応できませんでした!Aさん、大好き!」
「俺、包丁持ってくる!」
興奮気味のホソクを抑えて起き上がるとヘジンもバタバタとキッチンの方へ走っていく。
誕生日の歌を歌ってご機嫌そうな彼にまだまだ子どもな所を見つけて可愛く思えた。
ホソクは顔を真っ赤にして僕を見る。
「Aさん、本当に、本当にありがとうございます」
その姿が、笑顔が健気で愛おしくて僕はそっとホソクの頭を撫でた。
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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時