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「いや、…いやホソク。いないんだよ、夢を壊すようだけれど……現に僕はずっとハンターをしていて一度も」
「います!絶対います!」
「…Aさん?ホソク?どうした?」


僕の膝に座っていたホソクが立ち上がり話を遮って大声で言った。
ヘジンがその声で起きてきたようで後ろから扉の開く音がする。
様子のおかしい僕達にヘジンが慌ててランタンを片手に走ってきた。
ホソクが橙色の明かりに照らされる。


「Aさんは僕を助けてくれました。…こんなに傷だらけになるまで、命をかけてまで皆を守ってます。こんなに心が綺麗で優しいAさんの中に流れている血と、同じものが流れている吸血鬼が皆悪者なんてことあるわけないです。僕はそんなの絶対に信じません!」
「ホソク」
「……Aさん」


僕の両手をしっかり握って、気を使っているわけではないホソクの出した答えは心を震わせるのには十分すぎるほどだった。
ヘジンは僕にしっかりと頷いてから、笑みを浮かべた。

明かりに照らされたホソクはきらきらと光を放ち、輝いている。
まさに希望の光そのもので僕は今までの数百年が報われた気がして勝手に涙が溢れてきた。

光に照らされると赤くなる瞳に生贄として捧げられそうになった幼少期。
青年になってから歳を取らない僕を気味悪がり石を投げたり火を放ったりしてくる住人達。
ハンターとして活動を始めてから傷だらけの僕を化け物と呼び避ける人達。

色んな事があった。
それでも母の教えの通り人を愛する事を忘れなかった。

僕が産まれてから随分と時が経つ。
街は変わり、人も変わっていく。
とうの昔に死んだ母は「いつの日か、お前にも居場所ができるからね」と言い残していった。

目の前の光を僕はそっと抱き寄せた。
ヘジンの頭を撫でる。


「あ、あのっAさん、ごめんなさい!僕変なこと言っちゃいましたか?」
「ありがとう、ありがとう…ホソク、ヘジン…」


ヘジンはこんな僕についてきてくれた。
ホソクは僕に希望をくれた。
この二人のおかげで吸血鬼の血が流れるこの身体を誇り、生きていける。

母親にもきっと、もう心配をかけることはないだろう。

この日の夜は三人でベッドにぎゅうぎゅう詰めになった。
何と幸せだろうか、孤独だった僕がこうして居場所が出来たというのは。
そっとホソクの額を撫でてやると嬉しそうに笑って「おやすみなさい」と言う。

僕はそれに笑って「良い夢を」と返した。


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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時

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