検索窓
今日:20 hit、昨日:2 hit、合計:6,835 hit

ページ35

.


「この辺かな」


地図を見ながらヘジンが車を走らせて一時間ほど経っただろうか。
道路の端に車を寄せて外の様子を伺う。
街灯が少なくほとんど真っ暗なこの道は吸血鬼が身を潜めるにはうってつけの場所だ。
もう少し奥へ進んだ所が通報場所だが道が細くて車は通れそうにない。


「何だか気味悪いですね…」


ホソクが言われた通りに銃に手を置きながら僕の隣を歩く。
気配を感じるとはいえそこまで強くはない僕より前を歩くヘジンは神経を研ぎ澄ましながら被害者が居ないか辺りの念の為に路地裏を確認していた。


「吸血鬼はこういう場所を好むからね、怖くない?」
「はい、大丈夫です」


ふう、と震えた息を吐くホソクの背中を優しくさすってやると「ありがとうございます」と微笑んでそばに寄ってきた。
最近は昔のことを思い出してばかりで手を繋いで隣を歩いていた小さな可愛い横顔と重なって見えた。


「見えました」


ざわりと微かに嫌な気配がして目を前に向けるとひっそりとした声でヘジンがそう言って木の影に隠れた。
僕達も続いて息を潜めて覗くと話に聞いていたアパートが見える。
その中の一室でぼんやりとした灯りがついていて目を凝らすと人影のような物が揺らめいていた。
間違いない、ヘジンと視線で確認してホソクの手を引いて静かにアパートの方へと近づいていく。

ある程度近づいたところでやはり吸血鬼が気づいたのか僕たちの前にのんびりと外階段から顔を覗かせた。右手にはアイスが握られていて三人で毒気を抜かれてしまいそれを齧る吸血鬼と目が合う。


「ヴァンパイアハンター?」
「え?あぁ…まあ」


緊張感もなくしゃくしゃくと食べながら話すものだから構えていた銃を二人にもおろさせる。
ヘジンもホソクも顔を見合せてから不思議そうに僕を見た。


「あっ」


僕もよく分からなくて首を傾げていると残りが三分の一くらいになったアイスがぼろぼろと崩れて地面に落ちていった。
じわりと溶けていったそれを見て男がため息をつく。


「あ、あの……襲ったりしないの?」
「しないよ、僕は人から血液を貰ってるんだ」


ホソクが恐る恐るそう聞く。
何も無くなった木の棒をゆらゆらと揺らしながらそういう男は階段から飛び降りて僕達に近づいてきた。
ヘジンの身体が強ばる。


「ちょうど今暇で…中で話さない?」


長身の男はそう言ってまだぼんやりと明かりが灯る部屋を指さした。


.

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している



←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
125人がお気に入り
設定タグ:BTS , 男主 , ホソク
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。