First time ページ33
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暑い日が続き外では蝉の鳴き声が聞こえてくる。
額に滲む汗を拭いながら施設の後ろの方にある山の中の射撃場へ向かう途中で金属音が鳴り響いた。
食堂の方に山菜があれば取ってきて欲しいと頼まれ山に入ったけれど誰か練習しているな、と少し覗くことにした。
「あれ」
そこにはヘジンとホソクが二人で並んで何か話している。
辺りを見渡しても他に誰もおらず先程の銃声は銃を持っているホソクが放ったものなのだろう。
僕が声を出すとこちらを振り返ってホソクが嬉しそうに手を振った。
「Aさん!」
「おはようホソク、練習かい?」
「はい!今日はお二人について行く日なので!」
二人ともかなり汗をかいていて複数持っていたまだ冷たい水の入ったペットボトルを渡す。
喉が渇いていたようで二人ともすぐに半分程飲み干してしまった。
机には弾と空になったペットボトルが置いてある。
「二人ともいつからここに?」
「えーと…もう二時間くらい…」
「倒れたら大変だよ、せめて飲み物は補充してね」
かなり強い日差しが肌にじりじりと焼き付いていて熱中症が心配だった。
二人は僕の言葉で休憩することにしたようで頷いて木陰の方に向かう。
首にかけていたタオルで汗を拭ってまた水を飲んだ。
「Aさん、ホソク凄いんですよ。的、ほとんど命中だし真ん中に近い」
「ホソク、凄いね!期待の新人だ」
「ありがとうございます!でも…吸血鬼相手だともっと色んなことにきをつけないといけないですよね」
木のそばでしゃがんで水を煽ったホソクが綺麗に中心に穴の空いた的を見る。
今日はいよいよホソクが僕達二人について実際に現場を見る日だったから頭の中でシミュレーションしているのだろう、緊張したように深く呼吸をして胸を撫でている。
いよいよ今日か、と僕はホソクの頭に手を置いた。
少し照れたような顔で受け入れていて「大きくなったなぁ」とつい溢してしまった。
「大丈夫、僕達がちゃんと守るから」
「ああ、初めてだしな。一回飲み物持ちに行ってからもう一回確認するか」
「それじゃあ、僕はそろそろ行こうかな」
山の奥の方へ歩き出すと「ありがとうございます」とホソクの声が聞こえてきてサイドポケットに入っていた自分の水を飲んでからそれに手を振ると二人も大きく手を振って見送ってくれる。
それが可愛くて僕は頬を緩ませながらけもの道を進んでいった。
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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時