・-HS side- ページ29
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学校から帰ると施設にいる団員の方達が僕に「おかえり」と声をかけてくれる。
それに返しているとヘジンヒョンが手を振って走ってきた。
Aさんもヒョンも朝まで仕事をしていて明日までお休みの日だ。
ヒョンは全身暗い色のスウェット姿のまま髪も寝癖そのままで「おかえりー」と僕の隣を歩き始めた。
「もう大変だったんだよ、昨日の猫探し…ホソク、誰も聞いてくれないんだ」
「Aさんから聞きました、どんな感じだったんですか？」
肩を落としながら猫探し依頼の書類をペラペラと捲るヒョンを見上げる。
中学生になって少しずつまた背が伸び始めているけどヒョンと比べると僕はまだまだ小さい子どものままだ。
「これこれ、この子なんだけど。何か数年前にデカい館の前に捨てた黒猫をまた探してくれって依頼でさ」
「数年前！？」
「無茶だろ？」
予想以上に厄介な依頼で僕はその癖のありそうな依頼者を相手にするヒョンを想像してしまって大爆笑してしまった。
Aさん、そんな依頼をヒョンに任せるなんてよほど疲れていたのかなぁなんて涙を浮かべる。
「何か親戚がやっぱ飼いたいとか言い出して〜とか何とか言ってさ」
「それは酷いですね」
「結局走り回ったけど見つかんなくてめっちゃ文句言われて俺もう生き物をそんな身勝手で振り回すな！って言っちゃったよ、依頼料はちゃんと貰ったけどな」
「Aさんには内緒」と指を立ててしーっと言うヒョンに僕はお腹を抱えながら頷いた。
容易に想像出来るその場に僕も居たかったな。
自由スペースになっているテレビと三つほど机が置かれた場所にヒョンと座るとその猫探しの愚痴が続く。
散々何か文句を吐き散らかされたんだろう、報告書を見せてくれて僕は笑いすぎてお腹が本当に痛くなった。
「ほら、これ飲んで落ち着きな」
「あっ食堂のおばちゃん」
「ありがとうございます」
ヒートアップしていたヒョンに見かねたおばさんがココアをくれた。
僕の分もあって有難く飲むと優しい甘さにほっと息をついた。
「そんなに可愛い黒猫ちゃんもう誰かに拾われてるわよねぇ」
「そう！そうなんですよ、何回言っても聞いてくれなくて」
「ヒョンはそういうの苦手ですもんね」
まだ夕食までは時間があるからおばさんも椅子に座って話し始めた。
二人で愚痴大会が始まってしまって僕はそれをうんうん、と頷いて聞く。
まだAさんは寝てるのかな、早く起きてほしいななんて団長室を見ながら。
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作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年10月29日 23時
