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蛇口を捻ると熱いシャワーが頭から降り注いだ。
風が強かったから、飛ばされてきて髪に絡んだ吸血鬼の砂が洗い流されていく。
「ふう」
疲れた身体に暖かいお湯がすごく染み渡る。
シャンプーを手に取って泡立ててから洗い始めると柑橘系の良い香りがふんわりと香ってきた。
最近この香りのシャンプーになってから髪の毛の痛みが無くなった。
チヨンに聞いたら掃除の手伝いをしに来てくれている女性の要望だと言う。
トリートメントという物も僕は知らなかったけれどとりあえず使ってみたら最初は驚いたものだ。
髪を洗い終えて身体を洗うためにボディタオルで擦る。
チヨンに縫って貰った傷は跡が残ったものの案外綺麗に治ってやはり縫合する医者の腕によって変わるんだろう。
今のところ団員に大怪我をする者はいなくて皆僕よりセンスがあるな、と感じている。
「計算なら負けないんだけどなぁ」
なんて、独り言を言いながら傷だらけの身体を綺麗にしていく。
シャワー室には鏡もついていて自分の顔をまじまじと見てみる。
ホソクが一度僕のことを綺麗だと言ってくれたけど…頬や額に薄らと浮かぶ傷、最近では眉尻にも傷ができてしまってとてもそうとは思えない。
いつしか顔を隠すためにかなり長めに落ち着いてしまった髪は食堂の女性に「切った方がさっぱりするよ」と言われた。
「…………切ってみようかな」
ホソクの、恥ずかしそうにそう言ってくれたのを思い出して急に思い立つ僕は結構単純なのかもしれない。
いや、きっとホソクのお陰で怖い見た目だと思っていたのが薄れてきているんだろう。
しかし何だか恥ずかしくなってきて、自分のそんな顔なんて見たくもなかったのでさっさとシャワー室から出た。
着替えてドライヤーで乾かす時にも大きな鏡があって何だか鏡の中の自分にすごく気まずい思いをしてしまった。
…
「ふあ」
大きな欠伸が出て段々睡魔が襲いかかってくる。
団長室に向かうまでに「お疲れ様です」と声をかけてくれる団員達に手を挙げた。
扉をあけるともう見慣れてしまった自分の部屋。
棚には団員達やお手伝いの方と撮った沢山写真を並べている。
真っ直ぐ入って寝室に行き布団に潜り込む。
枕元では最近撮ったもう青年になったヘジンと少年になったホソクが笑って僕を見てくれている。
「ふふ、二人ともおやすみ…」
そう言えたか言えてないか、疲れ切っていた僕はすぐに深い眠りに落ちていった。
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作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年10月29日 23時
