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「あの少ししょっぱいスープにパンを浸して食べるのがすっごく美味しいんですよ!」
「いつもそうやって食べてたね」


思い出にある顔とは随分と大人っぽくなったホソクはあの日路地裏で小さく泣いていた子どもとはもう思えなかった。
人懐っこい笑顔に面影は残るけれど確実に大人の道を歩むホソクに僕の心配は要らなかったなと昨日見た特訓している姿を思い出す。


「ホソク、十五歳になるまでに何度か実践で一緒に行ってみようか」
「…えっ」


箸からぽろっとソーセージを落としてホソクはぽかんと開けていた口からみるみるうちに笑顔になっていく。
箸を置いて姿勢を正す姿に思わず少し吹き出してしまった。


「い、いいんですか!?」
「うん、ただし約束があって一つ目は僕とヘジンがメインで戦うから後ろに回ること、二つ目は僕達に気を取られすぎずに吸血鬼優先、三つ目は危ないと思ったらすぐに逃げることだよ」
「はい!」
「優先と言っても、実弾はヘジンに当たると死んでしまうからね。僕はチヨンの治療薬があるから多分大丈夫だけれど…」


咄嗟に制服のポケットからノートを取り出して一所懸命にメモを取りだした。
もしかしていつも持ち歩いているのだろうか、熱心な姿に僕は覗き込もうとするとホソクは何故かサッと見えないように傾けてしまった。


「あとは、今チヨンが良く映画とかで見る聖水のように吸血鬼に撒くと焼き付く液体を開発してくれてる。それは僕に当たったら危ないからね」
「わかりました!」
「あと…もうヘジンが話してくれてるかな」


ガリガリと慣れた手つきでボールペンを走らせるホソクは真剣な表情をしてそれを読み返している。
何年もヘジンの訓練を続けて分厚いのに終わりの方のページになった少しぼろついた本。
ホソクが十五歳になったら、あの日からもう十年経つことになる。
子どもの成長は早いな、と目を細めるとホソクは大事そうにノートを閉まって「頑張ります」と言った。
その瞳は僕に優しい血が流れてると、自分の意思で僕の傍にいるんだと言ってくれた時の光が宿っている。


「さあ、僕はシャワーを浴びて寝るかな」
「Aさん、ゆっくり休んでください」
「ホソクも勉強頑張ってね」


トレーを持って軽く手を振るとホソクも笑顔を浮かべて手を振り返した。
「ご馳走様です」と食堂の中を覗くと名乗り出てくれた元々弁当屋を営んでいた夫婦が大きな声で「はいよ!Aさん、おやすみー」と元気よく返してくれた。


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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時

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