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「Aさんの寝室はさっきの部屋の奥にあるみたいですね」
「ああ、扉があったね。あとで見ておくよ」
少し大きめの広い部屋はヘジンに割り当てて、その隣をホソクにした。
二人とも一人部屋になることに凄く興奮しているようで片付けている間にインテリアを将来どうしたいかの話で盛り上がっている。
僕は一旦部屋から出て、後々ここに住みたいと言っていたダンピールの子に割り当てる部屋の扉の札を裏に返しておく。
「あ!」
部屋の中から大きなホソク声がしたので戻るとダンボールの中から取り出した写真立てを見ている。
ヘジンがベッドの位置を調整してから身を乗り出して手元を覗き込んだ。
「ああ、俺の家族の写真。ホソクには見せたこと無かったっけ」
「たまに見てましたよ!僕達もこういう写真撮りたいなぁって思ってたんです」
ここに来る前に持っていたインスタントカメラをポケットから出してヘジンに見せると「いいね!」とすぐにホソクの後ろに回ってピースを作っている。
「Aさんも早く早く!」
「わわっ」
ホソクに手を引かれて三人でくっついた所でぱちっとシャッターを切る音が聞こえる。
大事そうにカメラを見た後ポケットにしまってヘジンの写真立てを机の上に置いた。
幸せそうに家の前で両親と兄弟が笑ってピースをして映っている。
ヘジンが高校入学の時に撮った写真だろうか、まだ真新しいぱりっとした制服を身にまとっていた。
じっと写真立てを見るホソクの顔は僕からは見えなかったけれどヘジンはすぐに肩に腕を回して頭を掻き回す。
「……そんな顔しなくてもホソクは俺の弟だよっ」
「わ!ヒョン…」
「ホソクが俺の弟になってくれて良かった」
「…ぼ、僕も…僕も……」
泣いてしまったホソクをヘジンが背中を叩いて宥める。
片付けが終わったらすぐに写真を現像しに行くことを約束して何度も頷いている。
僕はそんな二人を見ながらダンボールの中から出てきた一つの錆びた弾丸の入ったケースを手に取った。
「それ、初めてAさんと吸血鬼倒した時のやつです……ずっと、捨てられなくて」
「ヘジン…」
「そりゃ勿論、皆と会いたくなる時はあるけど…二人と出会えて良かった。Aさん、ありがとうございます」
一つ一つの思い出を大事にするヘジンに僕まで視界が滲む。
他にもホソクが描いた似顔絵とか色んな物が沢山出てきてヘジンは照れ隠しなのか「俺の部屋は後にしよう」とさっさと追い出されてしまった。
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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時