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部屋に入ってから軋むドアを開けて子どもを家に招く。
ヘジンに子どもを着替えさせて部屋を暖めておくように伝えて僕は風呂を沸かすためにスイッチを押してキッチンへ向かった。
かなり痩せていたから貧困に苦しんでいたんだろう。
きっと両親は…。
冷蔵庫の野菜と肉をコンソメで煮込む。
料理はあまり得意ではないため簡単な物しか出来ないが腹の足しにはなるだろう。
スープの良い香りに釣られてきたのか子どもがキッチンの扉からこっそりと顔を覗かせてこちらを見ていた。
どうやらヘジンが家から持ってきたお古の服が役立ったみたいでぶかぶかの上着を一枚着ている。
「どうしたんだい？」
「…っ」
声をかけると子どものお腹からぐう、と大きな音が鳴る。
咄嗟にお腹を抑えて恥ずかしそうにする子どもが可愛くて僕は笑みを浮かべるとヘジンが慌てて毛布を抱えて走ってきた。
「待て待て、まだ身体が冷えてるから」
頭から毛布に包まれて抱き上げられた子どもがまた僕をじっと見つめていた。
家に着いてからマフラーも帽子も取ってしまったために気になるのだろう。
首や頬に残った傷を指で触りながら子どもに近づくと先程よりは怖がる素振りは見せなかった。
「ごめんね、怖いかな」
「あっ…」
「ホソク、Aさんは怖くないよ。優しい人だ」
「ホソクっていうんだね、僕はA。よろしくね」
「…A、さん」
そっと頭に手を伸ばすと今度は撫でさせてくれた。
ヘジンにしがみつきながらどこか照れくさそうにする子ども──ホソクは吸血鬼と対峙する僕達の癒しとなった。
僕が作ったスープとパンを美味しそうに頬張りながら安心したのか笑顔で沢山話をし始めるホソクに僕とヘジンは微笑ましく見守った。
僕が出会った二人は強い子だ。
家族を失い、命をかけて人の幸せを願い戦うことができるヘジンと親を失ってもなお笑顔を絶やさないホソク。
ヘジンは僕が吸血鬼の血を持つダンピールだと知っても着いてきてくれている。
いずれは僕のこと、僕達の仕事をホソクに話さなければいけないときがくるがそれまでは何も知らせずこうして明るく笑顔でいてくれればそれでいい。
「Aさんの、お肉入ってないよ」
「あ！Aさん、俺の時にやらないでって言ったのに」
「よく気づくなぁ二人とも…」
二人が更に残っていた肉を僕の更に入れ始める。
小さな気遣いのできる心優しい少年達を、僕がしっかり守らなければ。
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作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年10月29日 23時
