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・-HS side- ページ16

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繋いでいるAさんの手が僕の手を強く握った。


「ほかの子どもたちに比べたら沢山我慢させてばかりだから…こういう時くらい僕に甘えてほしいな」
「Aさん、僕は別に…」
「いや、甘えてほしいのは僕の方かもしれないな」


しゃくしゃくと二人で雪を踏む音が鳴ってちらちらと小さな可愛い雪がAさんの黒い髪に乗っている。
鼻や耳、繋いでいる指先は真っ赤になっていてとても冷えてしまっていて帽子も、マフラーも手袋も全て渡された僕は愛しそうに微笑みかけてくれたAさんを見上げた。

甘える前に甘やかしてくれるAさんにこれ以上どうやって甘えればいいのか僕には分からない。
僕がずっと変わらずに思っていることは罪なき人、そしてAさんを守れる存在になることだ。

いつの間にか食品街を抜けた通りのショーウィンドウには沢山の服が置いてある。
一つのお店が目に入った。
マフラーが飾ってあって、ボルドーの生地に金色で薔薇の刺繍が施してある。


「ん?新しいのが欲しい?」
「あっいや、違います…」


僕が見ていたのがわかったのか立ち止まろうとしたAさんの腕を引っ張って先を急ぐ。
Aさんにきっと良く似合うと思って見とれてしまったんだと言えなかった。
値段を見たら二万円くらいして、とてもじゃないけど今の僕には買えないし言い出せなかった。

Aさんは何も気にすることなく「寒いね、ホソクは大丈夫かい?」と言って白い息を吐きながら僕の手ごとコートのポケットで暖をとる。


「僕が手袋使ってるから…」
「大丈夫大丈夫、僕はしばらく手が使えないから。ホソクが霜焼けにでもなったら大変だよ」


白い肌に柔らかい筆で赤を差し、綺麗な黒い瞳の中はほんのりと赤くて、そして烏の濡れ羽色をした艶やかな黒髪。
白い雪が幻想的なこの街の中で落ち着いた雰囲気のAさんがあのボルドーのマフラーをつけたら凄く、映えるはずだ。
でも僕が買えるような年齢になる頃にはあのデザインは売れて無くなっているんだろう。


「ホソク?」
「その…」


じっと見つめていたのが気になったのか数年で背が伸びた僕の顔を少し覗くように屈んだ。


「Aさんって、凄く…あの…綺麗だなって思って!」
「!ふは、…ありがとう」


勇気を振り絞ってそう言った僕にAさんは少し驚いてから目尻を下げてふにゃっと笑った。
心臓が痛くて診療所に着くまでの間はあんまり覚えていなかった。


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設定タグ:BTS , 男主 , ホソク
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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時

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