Sweets -HS side- ページ15
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Aさんが何針も縫う大きな傷を負って帰ってきた。
そして僕達に協力してくれるという医者の元へ抜糸と経過観察に行くために大分雪も落ち着いてきた外を二人で歩く。
巻いてくれたAさんのマフラーに顔を埋める。
手を繋いでいるAさんの手は僕より凄く大きくて何も出来なかった自分を悔やんだ。
僕がもっと大きくてAさんと一緒に戦っていたらこんな怪我しなくてもすんだかもしれないのに。
家で無事を祈りながら待っていることしか出来なかった自分は凄くちっぽけで情けなかった。
どうしようもなかったのはわかっているけれど、ずっとAさんが帰ってくるまでヒョンが僕の背中を摩っていてくれた。
「まだ時間があるから街を見て回ろうか」
「はい！」
いつも二人とも忙しくてこうやって街に出ることは初めてだった。
色んなお店が並んでいて、外を歩くだけでも楽しい。
外に見本用に置いてあるクッキー缶を見て「わぁ…」と声を漏らすとAさんも僕の後ろからそれを覗き込んだ。
「凄いなぁ、これ全部クッキーなんだ」
「どんな味がするんですかね？」
「買う？」
花の形をしたクッキーの真ん中にはジャムが乗っているのもあって美味しそうだったから何ともなしに言ったけれどAさんが僕の顔を見て当たり前のように言うものだから焦る。
「あ！そういうつもりじゃ、大丈夫です…！」
「いいんだよ、ヘジンも許してくれるさ」
「でも…」
そのまま手を引っ張られてそのお菓子のお店に入ってしまった。
にこやかに店内のお姉さんが僕達にいらっしゃいませと声をかけてくれる。
店内には見た事がないような沢山のキラキラしたガラスが付いた電気がぶら下がっていてお姉さんがいる所の箱の中には色とりどりのケーキが並んでいる。
僕達が外で見たクッキー缶は店の真ん中の所にある焼き菓子と書いてある所に置いてあった。
「あ、表のより大きいのもあるね」
「Aさん…っ」
一回り大きい缶を持ってAさんは僕の静止も聞かずにお金を払ってしまった。
渡された袋は思っていたより重みがある。
また手を引かれるままに店の外へ出て、Aさんと街の中を歩く。
僕は何だかんだ買って貰えたことが嬉しくて何度も袋の中を見て缶の蓋に描かれている綺麗な薔薇を確認した。
大きいから三人で沢山食べられるだろう。
「ホソクはもっとわがまま言っていいんだよ」
Aさんが急にそんなことを言い出した。
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作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年10月29日 23時
