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「Aさん!」
家に帰るとホソクが僕に抱きついてわんわん泣き、ヘジンはソファから立ち上がって安堵の表情を浮かべていた。
良かった、と泣く頭を優しく撫でる。
どうやら一睡もせずに僕を待っていてくれたようで二人とも目の下がうっすらと青くなっていた。
「心配かけてごめん、少し傷が深くて縫ってもらったんだ」
「そんなに…大丈夫ですか?他に怪我とか…」
「うん、腕以外は平気だよ」
「すみません、僕、何も考えずに飛びついちゃって」
ギプスで固定された左腕を見てホソクが慌てて僕から離れていく。
ヘジンも走ってきて僕の身体を見てほっと安堵の息を吐いた。
この二人と出会った後にここまでの大怪我はしていなかったから驚かせてしまったかもしれない。
でも後遺症は残らない怪我だとチヨンは話していたので俯いて落ち込むホソクに大丈夫だという意を込めて頭を軽く叩いた。
「僕、お腹すいたなぁ。ご飯はまだ残ってるかな」
「あっあります!ヒョンも僕もまだ食べてないんです、すぐ温めてきますね!」
「えっ?」
バタバタとキッチンに走っていく背中を目を丸くしたまま見ているとヘジンが頭をかきながら気まずそうに目線を落としていた。
…
「それで、協力してくれる医者が見つかったんだ」
「凄い!俺も早く新しい所に住めるように頑張ります」
「僕も、立派なヴァンパイアハンターになります!」
ホソクの作った夕飯を囲みながら今日あった出来事を話した。
今までずっと僕一人じゃどうにもならなかったことが二人と出会ってからゆっくりだけど着実に進んでいる。
僕の傷なんて大した事じゃない。
「Aさんの怪我が治るまで俺が日程調整して依頼を引き受けます」
「負担をかけてごめんよ」
「いえ、大丈夫です!ゆっくり休んでください。俺は平気なので」
パンをちぎってスープに浸しながらホソクは僕達が会話するのを黙って聞いている。
その瞳の奥には確かに強い意志が宿っていて、この子も良いハンターになるだろうと僕は感じた。
いずれはヘジンとホソクの二人で組んでもらおう。
僕のように一人だと手こずる時があるかもしれない。
「そうだ、一週間後の抜糸の時にチヨンの所へ二人も一緒に行くかい?」
「僕、行きます!」
「一週間後…あっ俺丁度バイトですね」
「じゃあ、ホソクと二人で行くよ」
「わかりました」
ヘジンに無理はしないで、と言うとAさんこそと言われてしまって僕は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時