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縫合が終わって、鉄分補給のために点滴も受けさせて貰えた。
麻酔が切れて左腕に痛みがあるが大分身体はマシになった。
少し休めと言われまだベッドで横になっているとコーヒーを入れて戻ってきた男は椅子に座ってカルテのような物を書きながら喋り始める。


「どうしてこんな怪我を?」
「ちょっと、吸血鬼と対峙して…」
「なるほど。噂に聞くヴァンパイアハンターですか」
「えっ!?」


なんでもなしにその医者がぽろっと話す物だから僕は驚いて起き上がりそうになったところを痛みでヘナヘナとまたベッドに戻っていく。
今夜は不思議な事が本当に沢山起きる。


「結構噂になっていますよ、人間で知っているのは極わずかですが。あ、僕はチヨンっていいます。お見知り置きを」
「あぁ、僕はA…」


その話を聞いて僕は嬉しくなった。
ヘジンと二人で頑張ってきた甲斐があったとすぐにでも報告するために帰りたい。
二人ともきっと喜ぶだろう、いい土産話ができた。

点滴が終わるまでの間、色んな話をした。
家で待つ二人の子ども達のこと、ヴァンパイアハンターの名を広めることや、その組織を作ること…ダンピールの能力は遺伝によるということも。
チヨンは随分と興味津々に話を聞いてくれる。


「なるほど…では僕はその専属ドクターとして働きましょう。お互いメリットしかないですよね」
「えっそんな…お金も無くて給料も払えないから、悪いな」
「その辺はお気になさらず。色んなルートを知っていますし、僕の収入は他にも沢山あるので」


点滴の袋を確認して、針を引き抜き小さな絆創膏を貼られる。
ゆっくり起き上がると、歩くだけなら何とか大丈夫そうだと思えるくらいに回復していてチヨンには頭が下がる思いだ。


「僕は大体ここに居ますから、一週間後にまた経過観察のために来て下さい。人間の子も連れて」
「ありがとう…本当に助かるよ」


そう言って診療所を出ると後ろでピシャリと引き戸が閉められる。
本当に僕達の身体にしか興味が無い様子のチヨンは素っ気なく見えても良い人だ。

色んな出会いがあった。
既に夜があけようとしていて、空は白んでいる。
二人が心配して待っているだろう。
あの警官ともまた話をしたかった。どうやらヴァンパイアハンターについて興味があるようだったから、きっと何か思う所があるんだろう。

白い息を吐きながらなるべく僕は家に帰る足を早めて家へと向かう。

未来は思っていたより明るいのかもしれない。


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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時

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