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あのダンピールの警官のおかげで助かったが、ふらふらと貧血の頭でいつもの病院を目指すのもそろそろ限界だった。
息切れをしながら左腕を抑えて膝から崩れ落ちる。
「はぁ、はぁっ…」
ここで終わりかもしれない。
そんな気持ちが過って歯を食いしばって耐えた。
そんなことを思っていたら家で待つ二人を置いていくことになってしまう。
霞む視界の中腕時計を確認すると既に21時半を指していた。
「おや、こんなところに怪我人が」
今日は随分話しかけられることが多い。
しかし既に僕はもう動けなかった。
積もった雪に膝をつけたまま声が降りかかった上を見ると白衣の上にコートを着て薬品が沢山入った籠を片手にぶら下げる男が立っている。
どうやら普通の人間みたいだ。
その男は僕の腕を肩に回して立ち上がる。
困惑していると男がすぐ側の随分掠れてしまったよく見れば辛うじて読めそうな“診療所”と書かれた看板の立つ家に入った。
「あの…」
「誰も来なくてずっと困っていたんです。さあ、早く横になって傷を見せて下さい」
僕の話は一切聞かずにさっさとベッドに座らせて机の上に置いてあった丸い眼鏡をかけている。
もう病院に行く気力はないし、大人しく横になるとタオルをのせた注射台を引きずって持ってきた男は左腕を乗せて傷を確認する。
「うわぁ。随分と深く切られてますね、ヴァンパイアにやられたんでしょう」
「何でわかるんだ…？」
「見てわかりますよ、鋭く細く、そして長く直線に引っかかれるような傷ですから。貴方はダンピールだから出血も少ない方ですけどもね」
俺の肩に縛ってあったタオルを解きてきぱきと縫合するための準備を整えてく医者らしき男が早口でそう言った。
やけに詳しい男に質問をしようとすると急に麻酔を打たれる。
何ヶ所か注射器を打ち込まれて痛みに顔を顰めていると自分から話し始めた。
「僕は吸血鬼と人間の身体の違いに興味があるんです。嬉しいですよ、こんな偶然に巡り会えて。病院を追い出されてから中々患者も来てくれなくて」
「はあ…」
嬉しそうに麻酔が効くまでの間、じっくりと僕の腕を観察したり瞳を覗き込んだり口を開けさせられくまなくチェックされる。
途中で血を欲しがられたので構わないと答えると嬉しそうにサンプルを取った。
こんな変な人間と出会うのは初めてで僕は流されるままに治療を受ける。
しかし、病院にいたというのもあってか縫合の速さと正確さは素晴らしいものだった。
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作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年10月29日 23時
