Snowy ページ2
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[約10年前]
「ぐすっ、ぐす…」
最近では見かけなくなった子捨てだろうか。
涙をぼろぼろ流しながら一人の子どもがしゃくり上げ泣いている。
僕は少し距離の離れた所でその子どもの前に座った。
この場所は良く吸血鬼が出るから危ない。
それに今は雪の積もる冬でいつ凍死してしまうかわからない。
子どもの指先や鼻先は可哀想なくらいに真っ赤になっていた。
「どうしたの?」
「オンマと、アッパが…僕のこといらないって…」
僕と出会ってから一年経ち大分顔つきがしっかりしてきたヘジンは顔を歪ませた。
この子にも弟がいたから思い出して重ねてしまったのだろう。
思った通り、やはり捨て子だった。
ヘジンと目を合わせて確認を取ってから子どもが怖がらないように左手の傷を右手で隠した。
「おいで、ここだと寒いでしょ?」
「オンマがしらない人にはついていっちゃだめっていってたから…」
「偉いね、でもここにいると本当に死んでしまうかもしれないよ。暖かい所に移動しよう」
「お兄ちゃんが抱っこしてやろうか?」
子どもは少し迷いを見せたあとくしゃみを一度だけして駆けてヘジンの方へしがみつく。
二人でほっと胸を撫で下ろす。
ヘジンが抱き上げると嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「よく頑張ったね」
僕が子どもに触れようとすると笑顔が消えてしまった。
怯えた瞳で手や顔を見る子どもに手を引っ込める。
子どもは素直だ。自身の手の広範囲にケロイドになってしまった傷跡をさする。
「Aさん…」
「大丈夫だよ、しょうがないさ。一旦戻ろうか」
まだ僕をじっと見つめる子どもに微笑みかけるとさっと顔を隠した。
上着を羽織らせてやってから雪がまだしとしとと降る道を人目につかないように歩く。
すぐに二人で拠点として使っているアパートについた。
生活は苦しい。
子ども一人増えて十分食べさせてやることは出来ないくらいには貧しい暮らしをしていた。
僕達の噂を耳にして依頼してくる人もいない訳では無いが微々たるもので、今はヘジンの遺産に頼り切りになっている。
「やだな、気にしないでください。Aさんは俺の恩人ですから」
何度も働き口を探したが身体の傷のせいでどこも雇ってはくれない。
以前、ヘジンに申し訳ないと頭を下げたがそんな事を気にしていたのかと言わんばかりに目を丸くしていた。
あの日決意と憎しみを抱いた瞳をしたヘジンを思い出す。
平和とは脆く、簡単に壊れてしまう。
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作者名:ユウたろー | 作成日時:2023年10月29日 23時