第九十七話 ページ47
廊下を出ると医者が通りかかる
「ああ、もしかして尚人くんの
お姉さん……いや親戚かな？」
『あ、いえ。私は……彼の友達、です』
先生は少し残念そうな顔をしたが
"そうか"と今度は嬉しそうに笑った
「彼の両親は……その、お見舞いに来たことが
少なくてね。忙しいのはわかるのだが
この頃、余計に病弱になってしまって
原因がわからなくてもう手の施しようがないんだ」
それはきっと魔力が不足してしまったから
ーーーこんな酷い話があるだろうか
「だけど、最近バーサーカーさんがよく来てくれて
すごく喜んでて……だから、君も最期に
尚人くんに会いに来てくれてありがとう」
…………ああ、そうだった
酷いなんて他人が決めることじゃない
尚人くんとバーサーカーが決めることだ
少なくとも尚人くんは
バーサーカーのことを大切に思ってる
「今日は本当に来てくれてありがとう」
『いえ、先生も……最後まであの子のことを
救おうとしてくれてありがとうございます』
お辞儀をすると先生は
尚人くんの病室へと入っていく
…………あれだけ弱っていたのだ
もう……会えない
もしかしたら昨日も
本当は無理をしていたのかもしれない
小さなことにでも気付いていれば
「…………行くぞ」
ハイドは私の腕を掴む
私はされるがままになっていた
いつもなら煽ってくるのにハイドは何も言わない
お願い……何か言ってよ
そうじゃないと溢れてきそう
殺人鬼のくせに
どうでもいいって投げやりなくせに
どうして今に限って何も言わないの
外に出ると空はもう真っ暗だった
電灯の明かりと、月だけが照らされていた
「……アサシンのマスター」
後ろから声をかけられる
振り返るとそこにはバーサーカーがいた
既に消え始めている
「ありがとうな。アタシとご主人を
二人にしてくれて。でもどうしてだ？
敵だというのに、命を狙ったキャットなのに……
どうしてあの時トドメを刺さなかった？
ご主人を見逃してくれた？」
ーーーそんな消えかけの状態で
よくもまあそうポンポンと質問を出せるものだ
思わず感心してしまった
なるべく手短に伝えなければ
彼女が消えてしまう
『バーサーカーも尚人くんも
大切な人の為に動いてたから……
その想いを踏みにじりたくなかった。それだけだ』
最期に大切な人と過ごす
それがどれだけ幸せなことか
どれだけ苦しいことか
だけど、それらが全て愛おしい
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まな★★(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます！そのように思って頂けて嬉しいです！ (2019年4月4日 12時) (
レス) id: 5821fa07da (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 橋さんの心の在り方に感動しました。私もこのように在りたいです。 (2019年4月4日 10時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まな★★ | 作成日時：2019年2月21日 10時
