第九十六話 ページ46
「あ、あっ……嫌だ、嫌だ！
動けっ！アタシはご主人を……
ご主人を…………」
「おい、今が殺すチャンスだぞ」
…………私には出来ない
だってあの子はきっと
『バーサーカー、一緒に戻ろう？
貴方のマスターの所に』
「なっ、何を言って……連れていくわけが」
私はバーサーカーに微笑みかける
"大丈夫"だと"貴方の敵ではない"と
『私は尚人くんと会おうって約束したんだ
いっぱい話そうって、ね？それだけだから』
私はバーサーカーの手を握り
彼女の体を起こしてあげる
ハイドはそれを不機嫌そうに見ている
でも手を出さないのは
私に遠慮しているからだろう
「……そうか、お前が……お前がご主人の話してた」
キャットは少しだけ複雑そうに笑うと
"うむ、ついてくるがいい"と
病院に戻ることになった
＊
バーサーカーに病院の中まで連れていかれる
今日は一段と具合が悪くて
尚人くんは外に出ることを許されなかったらしい
だからバーサーカーが代わりに外に出ていたのか
なら、私を警戒するのも無理はない
「あ！バーサーカーさん！大変なんです！
尚人くんがっ」
ナースの人にそう声を掛けられた瞬間
バーサーカーは走って病室に向かう
私たちもその後を追う
「ご主人！」
そこにはベットで息苦しそうに
横になっている尚人くんがいた
『尚人くん……』
虚ろに目を開いて私たちを見る
小さな声で"あ……Aさんだ"と
私の名前を呼んだ
「ごめん、なさい。せっかく約束したのに
僕……もうダメ、みたいで」
涙を零しそうになるのを堪える
尚人くんの体はやっぱり細くて
顔の色も青白くなっていて
今にも消えてしまいそうな
蛍の光のようだった
その時、バーサーカーが嘆きの声をあげる
「アタシが、アタシが宝具を使ったから……
アタシが、現界してるから……っ」
ほんのりピンク色の頬が
既にずぶ濡れになっている
止まることのない涙を尚人くんは
最後の力を振り絞って拭ってみせる
「バーサーカーの、せいじゃない……
ごめんね、弱くて……魔力をちゃんと
届けてあげられなくて……」
ーーー違う、きっと尚人くんが言いたいのは……
本当のことが言えないのは
私たちに遠慮してるから
……私たちが邪魔してるんだ
『尚人くん……大切な人への言葉は
ちゃんと選ぶんだよ』
私はハイドの手を引いて廊下へと出た
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まな★★(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます！そのように思って頂けて嬉しいです！ (2019年4月4日 12時) (
レス) id: 5821fa07da (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 橋さんの心の在り方に感動しました。私もこのように在りたいです。 (2019年4月4日 10時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まな★★ | 作成日時：2019年2月21日 10時
