第九十三話 ページ43
『誘ってくれてありがとう
でも今日も無理なんだ』
そういった瞬間、彼の体がピクリと動いた
もしかして怒ってる？
恐る恐る顔を見上げると
「そうか、それは残念だ」
そうなんとも言えない顔で微笑んだ
……胸が締め付けられる感覚
ああ、知っているとも
この痛みはずっと心に残る
でもそれは本人の方がずっと痛いだろうから
私は柴崎くんの手をそっと握って
『あ、明日！一緒に、帰ろ？』
「ーーー！あ、ああ」
『またね』
……つい感情に流されてしまって
手を握ってしまった！ああ！私の馬鹿！
手を握る必要性がどこにも感じられない！
《××××××！一緒に行こ！》
《僕なんかよりも××と見に行けばいいのに》
《だって、××××××寂しそうなんだもん》
《……寂しい？……よく分からないな》
《一緒に行けばわかるよ。ね？行こっ》
あの時も……まだちょっと子供っぽかったけど
"彼"の手を引いたりなんかしたっけ
思わず手を眺め、ギュッと拳を握りしめる
大丈夫……私は忘れない
今までの
だから……どうか今の記憶も
これからの記憶も、なかったことにしないで……
忘れられたくない
それでもいいから……
＊
昇降口から出て少し歩いた先に人集りが出来ている
なんだろうと、その中心にいる人物を見る
ーーーージキル！？
「あ、あの……誰か待ってるんですか？」
……わかってた
あの美形で学校に来られると
ああなるってわかってた
病院前で会うと約束していたのに
女生徒の質問に戸惑っている
困ったのか周りをキョロキョロする
ーーーー目が合ってしまった
「A！」
嬉しそうに駆け寄る姿は
まるで人懐っこい犬のようで
視線が一斉にこちらに集まる
同じクラスの女子達もいて
私の事を思いっきり睨んでいる
そりゃあ、協調性がなくて
愛想も悪くて、クラスに馴染めない奴ですが
私はちゃんと節操ありますよ、弁えてます
なんて、言い訳が通じればいいのに
「えっと……橘さん、知り合い？」
『あー、従兄弟のウィリアム』
まるで他人事のように自己紹介すると
彼女たちから敵意のある視線が消えた
「そ、そうなんだ！ウィリアムさん
よかったらこの後、喫茶店行きませんか？」
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まな★★(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます！そのように思って頂けて嬉しいです！ (2019年4月4日 12時) (
レス) id: 5821fa07da (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 橋さんの心の在り方に感動しました。私もこのように在りたいです。 (2019年4月4日 10時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まな★★ | 作成日時：2019年2月21日 10時
