第五十四話 ページ4
『ーーー私の声に
応えてくれたのは君たちだった
ただそれだけのことだけど
私はジキルとハイドに会えて嬉しいよ』
とまた笑ってみせる
その笑顔は先程のものと違って
心がくすぐられるような
妙におろおろしてしまう感覚で
ーーーなんだ、これ？
心臓に近い服の部分をギュッと握る
『？どうしたの？具合でも悪いの？』
こんなこと言えるわけがない
だから、俺は誤魔化した
「ハッ……呆れてたんだよ。俺様ちゃんに
会えて嬉しいなんて言う馬鹿はお前だけだ」
"ば、馬鹿、か……"
ちょっとだけ寂しげに笑った顔が
今でも忘れられない
＊
貴方side
次の日、朝、8時半
いつもより遅めの起床
日曜日で休みだからだ
今日はジキルの番か
「おはよう、A」
おはよう、と返事をする前に
テーブルに置かれた朝食を見る
このサンドイッチ、ジキルが作ったのか？
よく見ると珈琲も入れてある
どうやら準備してくれたらしい
『ありがとう、アサシン』
「いいんだよ。最近疲れてるだろ？
今日ぐらいゆっくり休もう」
…………ジキルと暮らしたら
私、ダメになってしまいそうな気がする
『そういう訳にはいかないよ。魔術教えて？
あと、この前のアーチャーとランサーの話を
しよう。私まだわかってないことがあるから』
ジキルは"やれやれ"と困ったように笑い
わかった、と承諾してくれた
＊
魔術の練習をしていると
後ろの方で何やら物音が聞こえた
音的にガラス製の……コップ？
いや、フラスコかな
一旦手を止めて振り返ると
ジキルがアニメに出てくる
博士のように何か作っていた
彼の隣にいき、のぞき込む
「ん？気になるのかい？」
『アサシンって薬学とか
医学とか学んでたんだっけ？』
彼は照れくさそうに笑う
でもどこか悲しげだった
ーーー確か、小説で彼は自己の人格から
『悪』を切り離そうとした
だけど結果的に『悪』を形にした
人格『ハイド』が顕れて
肉体と精神は変質してしまった
彼はみなに慈善家と呼ばれていた
それが重荷となってしまったのかは知らない
彼は『善行と人徳に満ちた紳士』であろうと
生きようとしていた
それが間違いだと
確信をついて言える訳では無いが
ーーーーーいや私は間違いだと言いたい
だってこんなのどちらも報われない
ハイドに日常を壊されたジキルも
悪の全てを押し付けられたハイドも
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まな★★(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます！そのように思って頂けて嬉しいです！ (2019年4月4日 12時) (
レス) id: 5821fa07da (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 橋さんの心の在り方に感動しました。私もこのように在りたいです。 (2019年4月4日 10時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まな★★ | 作成日時：2019年2月21日 10時
