a drop of orion

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バスに乗ったのも、星雲の森の入口で降りたのも俺たちだけだった。

あまりにも広大なその森は、とても静かで人気なんて微塵も感じさせない。

けれど、不気味ではなく、まさにその名の通り、違う星へと繋がる神秘的な場所だと感じた。





シュッ！シュッ！シュッ…！！


「っ、くっ…、」


森の入口から少し入った所の、拓けた空間で俺は、訓練を受けてる。


目の前のケイトに、何度も何度も拳を振るい向けても、ことごとく交わされる。


基本的な動きや技を教えてくれるわけでもなく、ケイトは、


「そのまま、かかってきて。俺に一発でも喰らわせたら合格だよ。」


なんて、いくら運動神経の悪い俺でも、たった一発なら容易い、と思った。


けれど、


「くそっ…！」


「時間の無駄だ、ケイト！」


ユウトがそう怒り出す気持ちも分かるくらい、当たるどころか、掠めもしない。


「言っただろ？雑念を、邪念を捨てろって。」


俺の攻撃をいとも簡単に交わしながら、ケイトは声色ひとつ変えない。


ケイトの言葉の意味を汲み取れないまま、ただがむしゃらにパンチを繰り返してた、


その時、


バゴォッ…！！


「っぐぅっ…、」


ズシャァ………


頰に激痛が走ったと同時に、俺は地面に叩きつけられた。


「っ…、う…、」

「攻撃しないとは、言ってない。」

「……っ、う…、」


無理だ、闘いなんてしたこともない。

あの映画の、主人公のように、

未知なる力が溢れ出すなんて、

やっぱり、現実には起こり得ない。




「…リョウスケ、」


そんな俺の心を読み取ったように、


「きっと今頃、ケイはこれ以上の痛みを受けてる。」


「っ！！」


「それでも、君を待ってはいない。」


ドスッ…！！


「うっ…、ぐ…、」


ケイトは、倒れたままの俺の腹を蹴り上げ、俺の身体は軽く宙を舞いまた地面に叩きつけられた。


「おい、ケイトっ…、」


その様子を見てるユウトの悲痛な声が響くけれど、


ガシッ……


「っ…！」


ケイトは構うことなく、俺の後頭部を掴み、そのまま引き上げて、


バゴォンッ…！！！


顔面を加減なく殴られた俺の身体は、反転してまた地面へと堕ちていった。



ズシャアァッ………





口の中に、血の味が広がる。


殴られた箇所と、地面に擦られてできた傷が、痛い。


痛い、痛いよ。







「もう、一緒にいたいなんて、思わない。」




ちがう、




「っ……、りょ、すけ……、」




痛いのは、




心だ ＿＿＿





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