a drop of orion

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『石と共に其奴も連れて行く。』


瞳孔を見開いて俺たちを見下ろし、不気味な笑みを浮かべる男に、ゾクッと全身が震える。


「そうはさせない。」


そう、剣を構えて奴を睨みつけるのは、見たこともない慧だ。


そんな慧に反して、武器も持たずに奴は近づいて来る。


と同時に、俺を背に、奴を目掛けて駆け出し、

ズシュッ……！！

目にも留まらぬスピードで、奴の懐に入り、慧は躊躇うことなく剣を突き刺した。


強い…


こんな慧、知らない……




突き刺されたと思われた男の身体は、


「っ…！」


一瞬にして泡のように消えた。


あの時と、同じ…


そう思った瞬間、



「くっ…！！」


男は音もなく慧の背後に現れ、


ドォォォンッッ！！！


慧の背中を凄まじい力で蹴り飛ばし、


「けいっ！！」


ズシャアッッ……


細い身体は金網に激突して、そのまま倒れた。

直ぐさま駆け寄り、慧を抱き抱える俺の背後に、奴が近づいて来るのを感じる。


「っ涼介、はな、れて…っ、」


無理やりに起き上がり、また俺を背中に囲い守ろうとする慧に、胸が締めつけられる。


地面に落ちた剣を拾い、奴に向かって攻撃態勢に構える慧に、


『其奴に手は出せなくても、お前は殺せる。』


奴は、聞くに怖ろしい言葉を投げかけたが、



「この身が滅びようとも、彼は渡さない。」



慧は、力強い声でそう言い放った。




『フッ、愚かな奴だ。』


奴があざ笑ったのと同時に、慧は素早く地面を蹴り上げ、


ズシャッ…！！


振り翳した剣の先端が、その頬の様な部分を掠めた。


『っく…、』


攻撃は、効かないわけじゃないんだ…


その寸前に奴は身を消していたのか…



現に今、奴の頰から、血が ＿＿


血…、なのか…？


赤く、ない……




真っ、黒だ………




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