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俺にはここが何処なのか、見当もつかない。
けれどとにかく、とにかく早く、慧を休ませて、負った傷の手当をしたい。
ここまで来れば、消えた彼奴もまた一から探すことになるだろう。
ホテル、という表示だけを確認して、その建物に入った。
入り口を通ったところ、直ぐに広がる電光掲示板には、
部屋の写真…?がズラリと並んでいて、その下に料金が表示されてる。
俺の肩に身体を預け、俯いていた慧が顔を上げた。
「……この部屋にしよう。」
細い指が指した部屋の料金はどうも前払いのようで、その部屋の写真の下にあるボタンを押して、お金を入れた。
何にも知らない俺は、今はホテルも無人なんだ、都合がいいと単純に思った。
2階の部屋を選んだのは、いざという時、窓から逃げれるからだろう、と気づいて無性に悲しくなった。
少しでも、休みたい。ううん、慧を休ませたいのに。
外観すら気にもせず入ったが、部屋の中は意外に綺麗で、とても広い。
大きなテレビや何に使うのか分からない電子機器まであるが、部屋のど真ん中にある大きすぎるベッドは、ひとつだった。
そのベッドに、肩で支えていた慧をゆっくりと降ろす。
「…大丈夫…?」
「……。」
ベッドの上に腰かけた慧は、俯いたまま微かに頷いた。
薄暗いオレンジ色の照明がなんだか落ち着かず、もっと明るくならないかと、俺は電気のスイッチを探した。
「……涼介…、」
背後から聞こえた慧の、俺を呼ぶか細い声は震えてて、
「ごめんね…。」
その後に続く言葉はそれだろう、と予測できた。
「……汚れた、からさ、シャワーだけ先に浴びようよ。慧、お腹空いてない?」
此の期に及んで、なんで俺は問い詰めないんだろう。
決まってる。
此の期に及んでも、この目の前の人が、
好きで好きで、
たまらないんだ……
「……シャワーだけ、浴びてくる。」
俺から目を伏せて呟いた慧は、ゆっくりと立ち上がり、
「……その後に、話を聞いてほしい。」
静かにそう告げて、浴室のドアを閉めた。
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Link(プロフ) - 青空と虹さん» 本まで読んだんですね!私は映画だけですが、同じく大好きなんです。こうしてパーシーのお話をできるのが嬉しいです。お話の続き、楽しみにしてくれてありがとうございます。私の話はぶっ飛んだ内容ばかりですが、楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月9日 7時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - Linkさん» 合っててよかったです!!パーシージャクソンは大好きで、本も全部読んでいたのですが、確かに山田さんに雰囲気似てるかも…!パーシージャクソンの片鱗を探しながら、楽しみに読ませていただきます^^* (2018年3月8日 14時) (レス) id: 66b7c3c525 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 青空と虹さん» はじめまして!コメント読んだ瞬間ににやけてしまいました!ついにわかる人が!と。そうです、パーシージャクソンです!主人公の雰囲気が山田さんに似てるな(勝手な見解です)というとこから妄想を膨らませました笑 コメント本当に嬉しかったです。ありがとうございます (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - chieさん» chieさん、いつもありがとうございます!コメント頂く度に励まされます!ふたりの行く末を見守ってください。楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - めぐみさん» めぐみさん、ありがとうございます!大好きというお言葉だけで、このお話が救われます。続きを楽しみにしてくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
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