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路線バスの、扉の一番近くの席を必然的に選んだ慧は、俺を窓際に座らせた。
料金表示板の横にある時計が、もうすぐ正午だと教えてくれる。
お年寄りや小さな子ども連れのお母さんしか乗っていないことに、少しホッとした。
今日は金曜日だった。高校生がふたり、こんな時間にバスに乗って、しかも男同士ずっと手を繋いでるなんて、周りから見たらひどく滑稽に違いない。
でも慧は、女の子に見られたこともあるから…、なんて、俺はこんな状況の中なにを考えてるんだろう。
それでも、俺の手を握るその手は、白くて細くて、綺麗な爪は、まるで桜の花びらみたいで。
「…お腹、空いた、ね。」
無意識にその手を見ていた俺に、甘くて優しい声が響いた。
いつもの、慧の声だ。
「…ん、ぺこっぺこ。あんなに走ったの初めてだもん。」
俺も、いつものように話したい。咄嗟にそう感じて、微かに笑ってそう返すと、
「…クス、速かったよ、涼介。次の短距離走のテスト、絶対いちばん。」
そんな俺に、慧も自然と笑ってくれて、
こんな時間が愛おしいんだ、って思い出した。
「俺が一番になったらご褒美ちょうだい。」
「…ふふ、なんの?」
「んー…、」
いつも見てるそのぷるぷるした唇に、キスしたい。
なんて、浮かんだけど、
「考えとく。」
言えるわけない。
なんか恥ずかしくなって、窓の外を眺めた。
目の前に拡がる、知らない街並み。
見たこともない情景。
俺は、物心がつくまで、ずっと家の中にいた。
幼いながらに、外に出ることなんて、普通の暮らしなんて、無縁だと思ったこともあった。
それが、
慧との出会いを境に、変わったんだ。
「りょすけ、」
窓の外を眺めていた俺を呼びかけた声に、振り向くと、
「たべる?」
慧の掌には、俺が好きな、いちごのチョコレート。
「…それ聞く必要ある?」
「…ふふ、ないね、はい。」
俺のことなら、なんでも知ってるんだよ。
なにもかも。
ねえ、そうでしょう…?
だから、だから俺だって、
慧が抱えてる、抱えてきた、その重たいものを、
受け止めれるから。
今度は、おれの番だよ。
今まで俺を支えてきてくれた君を、
守らせてよ ___
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Link(プロフ) - 青空と虹さん» 本まで読んだんですね!私は映画だけですが、同じく大好きなんです。こうしてパーシーのお話をできるのが嬉しいです。お話の続き、楽しみにしてくれてありがとうございます。私の話はぶっ飛んだ内容ばかりですが、楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月9日 7時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - Linkさん» 合っててよかったです!!パーシージャクソンは大好きで、本も全部読んでいたのですが、確かに山田さんに雰囲気似てるかも…!パーシージャクソンの片鱗を探しながら、楽しみに読ませていただきます^^* (2018年3月8日 14時) (レス) id: 66b7c3c525 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 青空と虹さん» はじめまして!コメント読んだ瞬間ににやけてしまいました!ついにわかる人が!と。そうです、パーシージャクソンです!主人公の雰囲気が山田さんに似てるな(勝手な見解です)というとこから妄想を膨らませました笑 コメント本当に嬉しかったです。ありがとうございます (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - chieさん» chieさん、いつもありがとうございます!コメント頂く度に励まされます!ふたりの行く末を見守ってください。楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - めぐみさん» めぐみさん、ありがとうございます!大好きというお言葉だけで、このお話が救われます。続きを楽しみにしてくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
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