仲良しとは ページ45
冨岡がしのぶに協力を仰いていたその時、蝶屋敷には烏医者とその家の少年烏旭が来ていた。前にAが善逸に求婚された時と同じく、負傷した隊士の烏を診に来ていたのだ。烏旭はこの頃本格的に勉強も兼ねて手伝いをしている。
着いてすぐしのぶに挨拶をしようとすると、しのぶの部屋からは話し声が聞こえた。誰か他の相手をしているようだ。そういう時は神崎アオイに声を掛けることになっているので、二人はそっとしのぶの部屋から離れた。
その時、烏旭の耳に話し声が聞こえた。
「冨岡さんの代は烏丸さんですよね。そんなに仲良しなんですか?」
烏旭は耳の良い少年だった。ここで言う耳の良いというのは、一般的に言われるものであって、善逸のような超人的なものではない。普通の所謂地獄耳。その耳で、実の姉同然に慕うAの名前を聞きつけた。冨岡という名前は知っていた。A姉ちゃんが頻繁に文の遣り取りをしている相手だ。確か水柱様だった。あの爺ちゃん烏の御主人様だ。烏旭は足音を小さくして歩きながらこっそりと耳をそばだてた。
「…別に仲良しではない。」
「えっ。」
思わず声を上げた。だって烏旭は見たことがあった。冨岡からの文を、眉尻を下げて微笑みながら読むAの姿を。それまでAのそんな顔を見た事が無かったからよく憶えている。それなのに仲良しではないなんておかしい。
「どうした?烏旭。」
「あっ、…いや、何でもないよ。」
烏医者に怪訝そうな顔を向けられ、烏旭の注意は散ってしまった。その間もしのぶと冨岡の話しているのはわかったけど、何を言っているかまでは自分達の声で聞こえなかった。
烏旭は憤っていた。何なんだ、一体。普段表情の動かないA姉ちゃんにあんな顔をさせておいて、仲良しじゃないなんてどういう了見だ。誑かしてるんじゃないのか。
「烏旭?どうした、機嫌が悪いな。」
「何でもない。」
実際に、Aと冨岡の関係は仲良しと言えるほどのものではなかった。会ったのは寛三郎についての話をしたあの一度きりだし、何なら互いの容貌だってはっきりとは思い出せなかった。しかし烏旭はそんな事を知る由も無く、何て冷たい方だと腹を立てていたのだった。
63人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2020年5月28日 1時