文通 ページ36
「よーう冨岡！」
鬼を連れた弟弟子は、煉獄と同じ任務に就いたと聞いた。煉獄と一緒なら学べる事も多かろう。何せあの男は凄い。才ある人間であろうに、それに胡座をかかず決して努力を怠らない。他の柱だって勿論そうだろうけれど、煉獄は抜きん出ている。炭治郎には水の呼吸を極めてもらわなければ困るが、他の呼吸からだって学べる事は学んでくれるといい。そんな事を思っていた昼下がり。
筆が大分傷んできたからと久し振りに出てきた街で、冨岡義勇は背後からがばりと覆い被さられた。正確に言えば肩に腕を回されたのだが、その相手が綺麗に気配を消していたのと、冨岡よりもずっと背が高いので、気持ちとしては奇襲を掛けられたようなものだった。
「宇髄。」
「お前、文通なんかしてたんだなあ！隅に置けねえなあこの野郎が！」
「…文通？」
「恍けるなよ。烏丸…A、だったか？女の名前だろうがよ。」
挨拶もそこそこに始まる会話の展開に戸惑う。宇髄が何故Aを知っているのか、文通と言えるかは兎も角、自分とAが遣り取りをしている事を、誰かに言った覚えは無かった。
それには大して深くもない理由があった。
Aへの文を頼まれた寛三郎が、何を間違えてか宇髄の家に届けたのである。冨岡が俺になんて珍しい事もあるもんだと文を開いてみると、宛名は女の名前だった。その時の宇髄の動揺と言ったら無い。あの？冨岡が？？頭の中に疑問符が飛び交い、烏が宛先を間違えたとかいう些細な事など本当にどうでもよくなった。あまりの動揺に、もう一度その事実を噛み砕いて反芻して、きちんと理解すると、今度は好奇心が鎌首を擡げてきた。
宇髄はこういう性格なので、ちょっとだけちょっとだけなどと、その下世話な好奇心を丸出しにして目を通してみた。するとまあなんと色気の無い事か。これが男が女に宛てる文かよと頭が痛くなった。何せ書き出しは自分の烏の様子についての丁寧な報告なのである。宇髄は寛三郎の事情もAが烏匠だという事も知らなかったから、そうなるのも当然ではある。
しかしこれを書いたのはあの冨岡である。人形のように表情を変えず、無意識下で不死川を煽り倒し、粘着質な伊黒からは反って口を利かれないほど蛇蝎の如く嫌われていて、空気を読めないことにかけては手の施しようが無い、いつもぽつねんとひとりでいる、あの冨岡義勇である。それが女と文の遣り取りをしている。何だかよく解らない感慨すら湧いてくるほどだった。
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あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (
レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます！とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あさ x他1人 | 作成日時：2020年5月28日 1時
