【鬼滅の刃】鎹烏の訓練士【冨岡義勇】

我妻善逸 ページ22

「Aちゃん、御手紙が届きましたよ。」
「はい！ありがとうございます、そこに置いてください！」

村長の奥様、チヨ子さんが訪ねてきたその時、私はちょうど烏達の羽繕いをしているところだった。基本的に羽繕いは自分でさせることになっているけれど、たまには烏匠の手でする事もある。羽繕いという行為には、羽を整えるだけでなく、鳥の身体から出る脂や粉で身体を護る役割がある。それに加え、鬼狩り様と行動を共にする烏には特別な脂も擦り込まなければならない。それは烏匠の手でする事になっているのだ。そんなわけで、もぞもぞと動き回る烏達と格闘している真っ最中だった。

「あらあら、大丈夫？」
「お気になさらず！
　あっ、こら、ふ志ゑ！ばさばさしない！」
「ふふ、ここに置きますからね。」
「どうもありがとう！お疲れ様です！」

チヨ子さんは可笑しそうに笑いながら帰って行った。私が大声を出していると村の皆可笑しそうにする。稀だからだろうか、Aも若い人の子なんだなあなんて言われる。つまり私は人の子に見えないのでしょうかと訊くと、お前いつも澄ました顔をしているからとまた可笑しそうに笑われる。

羽繕いを終え、文を取って開くと、胡蝶様の蝶屋敷からだった。負傷した隊士様の烏も調子が悪い事がある。隊士様の危機に烏も慌てて、稀に木に激突したり、尖った枝に引っ掛かったりしてしまうのだ。そんな時に、烏医者が治療を頼まれる。

基本的に烏医者が行く事になっているが、今回私に依頼が来たのは、負傷したのがうこぎだったからだ。鎹雀はうこぎだけなので、忙しい烏医者の手を取らせないよう私が全部やると言ったのだ。今は私も忙しい時期だが、まだ余裕はある方だし、何より胡蝶様の頼みであるので。

「ウコギ、怪我シタカ！？」

周りの烏達が群がって、字が読める子がぎゃあとひっくり返ると、周りも騒ぎ出す。二年訓練を共にしたこの烏達から、うこぎは先輩だというのに大層可愛がられていたから。

「うん。でも、そんなに大怪我ではないみたい。」

そう言うと、口口に良かった良かったと騒ぎ始める。あんまり騒いで小躍りを始める烏もいて、羽が何枚か散っている。羽繕いしたばかりなのですが。

「明日はうこぎの所へ行きます。朝の内に課題を出すから、しておいてね。」

烏達はまた口口にわかったわかったと言う。

いつだったか、うこぎは優しい主人に付けただろうかと思いを馳せたのだったっけ。明日、それもわかることになるのだろう。

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