検索窓
今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:49,491 hit

ページ19

二日目、三日目と、聞いていた選別参加者数から一人たりとも減らない事は不思議に思っていた。でも、今年の参加者の方は揃って優秀なんだなあと、兄も私も喜んでいたくらいだった。四日目になると流石に焦り始めた。このままだと用意していた烏では足りないと。鎹烏になるためには、三年間かけて訓練をするから、簡単に補充ができるものでもないというのに。

「カア!本日モ全員生存!!
 明日ハ放烏ヘ出発!担当ノ烏匠ハ準備ヲサレタシ!!」

五日目の早朝、藤襲山と村とを往き来する烏からの知らせに、村の皆が青くなった。最終選別が始まった頃までどんなに遡っても、通過者は多くて三分の二、全員生存だなんて聞いた事も無かった。勿論、優秀な隊士様が増えるのは喜ばしい事だ。だけれどあまりに予想外だった。一人の烏匠が世話を出来るのは、多くて十五羽前後だ。だからその年も十五羽前後を準備していたけれど、それではまるで足りなかった。

緊急時に派遣する烏、代員の烏を、支障が出ない程度に掻き集めると、あと二羽、足りなかった。隔年放烏予定の烏匠が、一羽だけならと一番優秀な烏を出してくれた。あと一羽足りなかった。だから私達は苦渋の決断をした。

「寛三郎さん…、今から、他の御主人に付く事はできる?」

あの時の寛三郎さんの瞳が、私は今も忘れられない。黒黒とした瞳がとても悲しそうに色付いた。本当は、これはよくない事だ。主人を喪ったばかりの鎹烏をあろう事かまた最前線の鬼狩り様に付けるなんて。私達がもう少し頑張って、あと一羽多く訓練させられたら、こんな事にはならなかったのに。

しばらく俯いていた後、寛三郎さんは引き受けてくれた。一つ、悲痛な言葉を零して。

「…次ノ主人ハ…、死ナナイ人ガイイ。」

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (45 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
63人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 冨岡義勇 , 鎹烏
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2020年5月28日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。