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結果として、寛三郎さんの望みは今のところ叶えられていると言える。もうあれから八年経っているのだから。あんな時にまた前線に送り出して、大変な引け目を感じている私としては、あわよくば冨岡様が引退されるまでこのまま何事も無くいけばいいと思う。勿論、それは冨岡様に限った事ではないけれど。
しかし、鬼狩り様の引退と言えば殆どが二十代後半、遅くて三十くらいが通例だと聞く。下手に身体が動かなくなって命を落とすより、育手になって継いでいく事にしようと考え始めなさるのが、大体そのくらいだろうから。つまり、何事も無ければ冨岡様はあと五年前後は鬼狩りの任に就く事になる。
寛三郎さんは、どう長く見積もってもあと五年なんて無理だ。であれば、別に今すぐ交代と言わずとも、次の若い烏に今から少しずつ引き継いでいくというのでもいい、準備くらいはしていくべきだと思う。それは心の準備も含めて。
「義勇…、儂ハ義勇ノ役ニ立チタイ。デモ、足手纏イニハナリタクナイノジャ…。」
「……。」
いやこれは泣く。泣きます。
「あの、烏の寿命もかなり個体差がありますから、本当に問題ないという事でしたら構わないんですそれで。」
完全に絆されてしまったが、だってこんなに健気だもの。経験値の高いというのは武器でもあるわけだし!問題ないというなら!それで!大丈夫!!
「…俺には関係無い事だ。」
…はん??
「関係無いとは…どういう意味でしょう。ご説明願います。」
寛三郎さんがこんなに健気なのに、関係無いとは随分なおっしゃりようではないか。私ですら性格が噛み合わないくらい心を痛めているのに。八年も一緒に過ごしておいて関係無いとは??
「俺が、無理に残って欲しいと言ったら…寛三郎は身体の辛いのをおして仕事を続けるだろう…。そんな事は本意ではない。寛三郎の身体と意志が一番だ。」
はっとした。そうだ、これは本来冨岡様の問題ではない。寛三郎さんが自分の身体と相談したその結果が最も重要なのだ。そんな事を失念して、やれ随分なおっしゃりようだの何だのと、私は何て事を思ってしまったのだろう!…言い方は考えていただきたかったけれど。
「…申し訳ありません、おっしゃる通りです。
寛三郎さん、あなたはどうしたいですか。」
「儂ハ、…出来ル事ナラ続ケタイ…。」
「では、続けましょう。」
その時の二人の、何とも言えない安心したような表情からは、八年分の絆を確りと感じ取れるようだった。
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あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2020年5月28日 1時