【鬼滅の刃】鎹烏の訓練士【冨岡義勇】

・ ページ13

「わかりました。次からは私から計らっておくわ。
　さあ、お疲れでしょう、休んでいらっしゃい。報告は夜にゆっくり聞くからね。」

彼女は行儀良く返事をすると塒に入っていった。そう、行儀が良いのだ、とても。私が躾ける前から抜きん出て利口だった。しかし今回の事は彼女の行儀の良さが裏目に出たと言えるかも知れない。優秀な者を遣れば良いというわけでもないという事だ。浅慮な私の落ち度である。

それにしても、そんな話を聞いてしまうと途端に寛三郎さんが心配になった。ずっと相性が良いのだと思っていたけれど、今でもそれは間違いではないと思うけれど…。言葉足らずの冨岡様と高齢の寛三郎さん。絶妙に互いを補えていない上に、絶妙に互いの欠点に拍車を掛ける可能性がある。

「…もう一度担当の交代を進言した方が良いのかも…。」

考えてみれば、冨岡様から交代の必要は無いと文を頂いたのも随分前であるし、一度そう言った手前言い出しにくいという事もあるのかも知れない。柱様という事なら責任感が特別にお強いだろうし、歳を取ったというだけで解雇は無責任だとか、そういう気を回されたのかも知れない。

「母さん、紙の余りはあった？文を出したいの。」
「検診の時にたくさん使ったからねえ…余りがあるか…ちょっと待って頂戴な。」

村で一番字の上手な母に習った私も良い字を書くと評判で、村から出す文は殆ど私が書いている。と言っても、私の字が世間一般にとても上手かと言うと、そんな事は恐らく無い。この村の人間は何故だか知らないが悪筆な人が多いが、母は外から嫁入りしたので、生まれ育ちは都会の方なのだ。それで母や私の字が相対的に綺麗に見えるだけなのだと思う。

話が逸れたが、つまり、検診で問題があった烏の主人の隊士様方に文を書いた事で、元元少なくなってきていた紙をかなり消費してしまった。冨岡様のように隊士歴が長い方はともかく、そうでない方には説明も詳しく書かなければならなかったのだ。

私の記憶の限りでは、あの時最後の方には失礼ながら字を詰めて書いた覚えがある。つまり紙が無かったという事では。

「無いねえ…。買わないと。」

紙やら墨やらについては村の烏匠としての出費なのでお金が出るし、我が家の経済には何ら影響無いのだけれど、無くなれば街まで買いに行かなければならない。それならこの際直接お話しした方が早い。冨岡様を訪ねるとしよう。

「明日の昼間、買いに行く。」
「そうかい、気を付けてね。」

冨岡様→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す