冨岡様 ページ14
本日は晴天なり。雲一つ無い青空である。未だ暑さは残っているし、秋と言うほど秋でもないけれど、空の高さは季節の移ろいを示すように変わってきているように見える。
街に出て来ていた。村の人間からすれば、林を抜けるくらいの事は大した苦労でもないし、あの村では手に入らない物も多いので、街に出て来る事は珍しくない。美味しい山菜は食べ放題だけれど、山菜だけでは生きていけないのだ。
「もし、紙が欲しいのですが。」
「大きさは。」
「文を書くような。」
「いくらくらい欲しいのか。」
「取り敢えず五十頂いても?
ああ、足りなければある分だけでも…。」
「足りないなんて事があるもんか。五十でも百でも好きなだけ持っていくといい。
でもそんなに要るのか。」
「買い置きですよ。遠いものですから。」
「そう言ったって、文なんかそう頻繁に書く物かい。…ああ、解った、文通か。若いねェ、いいねェ。」
「…ご覧の通り、愛嬌も器量も今ひとつで。」
面倒だ。父が生きていればこのくらいだろうが、この年頃の男性は、若い者を見れば二言目にはやれ恋だのらぶだのと、冷やかしが三度の飯より好きと見える。そりゃあ私だって十九の娘であるので、そういう年頃だという事は自分でもよくよく解っているけれども、それのために文通だの何だの七面倒臭い事をしている暇は無い。責任ある役目を負っているのだ。いよいよとなれば村長が適当に宛がってくれるだろう。
「いやいや、お前さん、大学校に行くような人は、反ってお前さんみたいな賢そうな、自立してるのが好みだったりするよ。
それに最近の若い娘は煩くて適わん。業突く張りも多いし。」
「可愛いお強請りだと思いますけれど。」
「強請られる方は堪ったもんじゃないのさ。」
それはそうだろうけれど。大学校に行くような人が、何が悲しくてこんな女の婿に来るのか。大体絶対に話が合わないし、烏なんてきっと好きでないだろう。というか抑も話が逸れている。
「あの、他にも行く所がありますの。それに遠いと言いましたでしょ。」
急かすと、解った解ったなんて言う。少しも解っていないように思える。奥から纏めてよっこいしょと運ばれてきた紙は、硬めの紙に包んだ上から持ってきた風呂敷で包んだ。中中の大きさと量である。少し値上がりしていたけれど、それは見越していた。
「重くないかね。」
「大丈夫です。どうも御世話になりました。」
ここからが本日の主たる目的なのである。
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あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2020年5月28日 1時