27話 ページ33
重たい鐘の音がまだ寝ぼけている耳によく響き、Aが顔を顰めた。
朝フロイドの蹴りで目覚めてから二度寝したものの、どうも寝付けず寝不足のようだった。
普段は比較的真面目に授業をうけている彼女だが、今日は頬ずえをつきながらぼーっと教卓を眺めている…いや、正確に言うと瞼は閉じかけていた。
最後列の端に座っているということもあり、その様子に気づいてるのはフロイドだけのよう。
フロイドは珍しげに彼女を見つめつつ、教師の話なんか耳にも入ってこないといった様子で大きな欠伸をした。
「フロイド、私ちょっと抜ける」
授業が終わる頃には限界といった感じで机に突っ伏したAはか細い声でそう言い放ち、ふらふらとどこかへと歩いていった。
「え〜〜〜…まあいっか」
そう言うとフロイドは廊下でジェイドを捕まえ、合同授業の教室へと入っていく。
「……っ、あぶなっ…」
何もないはずの廊下で躓きそうになる。
思っていた以上に眠気は取れず、これでは周囲に痴態を晒しかけないと柄にもなく授業を抜け出していた。
学園近くの海。
この間フロイドと来たその場所に制服のままそっと飛び込んだ。
水を吸って重くなるはずの服は何故かヒラヒラと水中で質量を無くしたかのように漂う。
水の中で、彼女の髪が本来の姿に近づいていく。
キラキラと陽の光を反射して美しく輝いている。
水の冷たさに気持ちよさそうに伸びをして、彼女はそっとまぶたを閉じた。
。
2世紀半ぶりの女子生徒、
闇の鏡に選ばれた【逸材】。
この学園に入学した当初から、そんな評価が彼女にはついて回った。
生まれ持った美貌と人間では無いという事実もそれを増長させた。
別に人並み外れて何かが得意なわけじゃ無い
ただ人より少し、他人の目に魅力的に映るだけ。
それだって魔法で創られたマガイモノの評価かもしれない。
誰にだって受け入れられた。
認められた。
誰もがAに手を差し伸べ、その美しさと才能を称えた。
愛されるというひとつの才能。
でも、彼女にとってはそれが気味悪いものにしか感じられなかった。
「まるで、物語の人魚姫じゃない、」
自由を求めた赤髪の人魚姫。
誰もが羨む美しさと歌声を持って海の住人たちに愛された、愚かなあの人魚姫。
「ちがう、」
私が求めたのは、強くて慈悲深い深海の魔女。
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ラム - 続きが気になる (2020年4月22日 7時) (レス) id: 9e05ed3410 (このIDを非表示/違反報告)
lin123698745(プロフ) - マリアさん» ありがとうございます!本編で先生との絡みも入れていきたいと思っていますので少々お待ち下さい! (2020年4月22日 1時) (レス) id: f82a6878e9 (このIDを非表示/違反報告)
マリア(プロフ) - 更新ありがとうございます!クルーウェル先生との絡みも見たいです!更新待ってます(^^) (2020年4月15日 18時) (レス) id: 4cdcd75303 (このIDを非表示/違反報告)
lin123698745(プロフ) - マリアさん» ありがとうございます!色々と関係性も練っているので、作中で披露出来ればと思っています(o^∀^o)更新頑張ります! (2020年4月6日 10時) (レス) id: f82a6878e9 (このIDを非表示/違反報告)
マリア(プロフ) - この作品とても最高です!ヴィルさんとどうゆう関係なのかとても、気になります(о´∀`о)更新楽しみに待ってます! (2020年4月6日 8時) (レス) id: 4cdcd75303 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りん | 作成日時:2020年4月5日 20時