【志麻】小動物とビタースカッチ

15. 思い出せない ページ15

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「帰ったらおやつ食べようね」


『うん！』


まだ背のちっちゃい私は 誰かと手を繋いで坂を登る。


右手に温もりを感じながらすぐに帰れると…いつもの家に帰れると、まだ信じていた私。


坂を登り切ると、誰かは私の手を離す。


「ごめんね、"お母さん"忘れ物しちゃった。ここで待っててくれる？」


"すぐに戻ってくるから。ごめんね…"


…その人は二度と戻ってくることはなかった。


右手に残った温もりは、いつしか消えて思い出せなくなってしまった。


どんな人かも、その人の顔も、私の本当の名前も_____。




___________



『_____ッ』


カーテンから眩しい光がこぼれて降り注ぐ。


久しぶりにこんな夢をみた。


まだこの夢に慣れないのか、またもや寝ている間に泣いていた。


『学校…行かないと』


林間学校まであと１週間。


やるからにはきちんと委員の仕事をこなさなければ。


…志麻くんだって、私のこと 気にかけてくれてるんだから。


制服に着替えて身だしなみを整え、朝ごはんも食べずに家を出た。



「…あ」


『え…』


出たら志麻くんと鉢合わせした。やっぱり朝ごはん食べればよかったかも。







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