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第八話 〜ガス〜 ページ8

「けほっけほっ!うっ…あ…」

「…!A様!」

真っ先に症状があらわれ、倒れてしまう。

私も決して平気な訳ではないが、並大抵の人間よりかは耐性がある。
それに対して、彼女は病弱で余計身動きが取れない。


なら、私のするべき事は一つだ。


聴覚を頼りに、声のする方へ、する方へ、彼女を探す。
彼女を見つけると横に寝かせたまま担ぎ上げ、そのまま窓の方向へと走る。


ここは二階。着地すれば当然脚は重症を負う。だが、命にまでは関わらない筈だ。

片脚を振りあげると硝子は声高にガシャアアアンと音を突き刺すが、ここで躊躇する暇はない。

窓に脚掛けそのまま外へと飛び出した。



彼女に、少しでも衝撃を与えないように。

彼女が、少しでも辛くならないように。


この時ばかりは、心中だなんて思わなかった。死にたいだなんて思わなかった。

何故自分でもここまでしているのかはわからない。
多分きっと、任務だからだ。森さんからの、ボスからの命令だから。それ以外は、何も無い、何も…

私はそう思って、急落下していく。
白い煙が視界を埋め尽くす中、衝撃を待った。




…が、感じたのは脚に激痛では無く、身体に柔らかさ。

クッション材。私の下にあったのはとても大きなクッション材だ。

誰かが用意を?とも考えたが、すぐに用意できる代物ではないし…



「お疲れ様。太宰くん」
手を叩いて現れたのは品宮さんだった。周りには、あの場に居た使用人全員が揃っている。

「わかっててもびっくりしたなぁー…」

「安全を確保していたとは言え、A様にも怪我が無く、安心致しました」



「……抜き打ち試験、ですか」

「正解だ。騙すような真似をすまなかったね」

反動で若干、気が抜けてしまったが、確かに事前の知らせが無い抜き打ち試験は、本当の意味で相手を試すのに有効だ。
特に危険を伴う仕事には、こういった試験があるとよく聞く。


「ガスは無害で、勿論A様のお身体に影響も全く無いから安心して欲しい」

品宮さんは続ける。
「…それにしても君の動きは本当に凄かった。
何処か手慣れていて、まるで経験が有ったかの様に感じるよ」
私はゴクリと固唾を飲み込んだ。ピリッと緊張感が走る。

「流石、若くても執事を務める分の実力だね」
「ありがとうございます」
「太宰くん。
今後何かが起こったとしても、A様を最優先に護りなさい」
「……はい」

私は品宮さんに何かを見透かされたような気がして、すぐに肯定できなかった。

第九話 〜従兄弟〜→←第七話 〜爺や〜



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太宰愛華(プロフ) - 凄く面白いです!!何だか太宰さんが可愛くみえます。 (2017年4月7日 13時) (レス) id: 003b9a1db1 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - 海月さん» フラグの方、外し忘れをしておりました。ご指摘頂きありがとうございますm(_ _)m (2017年1月5日 16時) (レス) id: 718f02a46e (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - こんにちは。「オリジナルフラグ」が外れていませんよ。違反行為ですので、速やかに外してください。 (2017年1月5日 16時) (レス) id: f08cf5272d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リリィ | 作成日時:2017年1月4日 14時

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